

太平洋とカスケード山脈の間に位置する米オレゴン州ポートランド。深い森に囲まれ、豊かな公園が多く、ウィラメット川が緩やかに流れるこの街を「自然環境に溶け込んだ街」という人もいます。実際のところはどうなのでしょうか?もうお分かりですね。今回のランニングガイドはポートランドをご紹介します。では実際に走ってみましょう。
かつては工業港として栄え、伐採産業も盛んだったポートランドですが、今では米国で最も環境に優しい都市の1つへと変わりました。自然を大切にするアプローチは都市計画にも反映され、人々がのんびりしたり、散歩したり、ランニングしたりできるスペースが、この街にはふんだんにあります。
ポートランドに点在する魅力的な公園を訪れると、街の華やかさが実感できます。街の中心部での地元グルメもぜひ堪能したいものです。もちろん、ランニングが終わった後の話ですが。
まずは足を止めて、新しい街を探索することにフォーカスを当てたいと思います。こんな時は地元の誰かに案内してもらうのが一番。幸い、すばらしい適任者を見つけることができました。その人が紹介する3つのルートを通して、ポートランドのランニングの魅力を探っていきましょう。
今回ガイドを務めるのは、ポートランドのランニングシーンを熟知したラジーヴさんです。On Run Crewのメンバーでもあります。健康的なライフスタイルを目指す彼はトレーニングを熱心にこなし、食事にも気を使いながら毎日を過ごしています。他の人の健康的な暮らしもサポートしています。
「生まれも育ちもポートランドです。いつでも故郷と呼ぶ場所です」とラジーヴさんは言います。
「今は健康やウェルネスのコーチをしています。植物由来の食材で料理をするのが好きです。コミュニティービルダーとして、人々がより健康的な生活を送れるようサポートしています」
ランニングは人生の一部だと言うラジーヴさん。他の人にもランニングの素晴らしさを知ってもらうため、インブレース・チェンジ・ランクラブ(Embrace Change Run Club)を設立しました。ウォーターフロント・パークで定期的に活動し、誰でも安全な環境で汗が流せるよう取り組んでいます。
「ランニングをすると落ち着けます。体と心を自由に動かすための良い手段です」
「ランクラブは、心を安らげ、健康的に体を動かし、人とつながり、励まされる空間です。以前から、ランニングを通じてポートランドでコミュニティーを育て、人とのつながりを大切にしていきたいと思っていました」
「私にとってランニングは単なるエクササイズではなく、瞑想です」
春は周囲に満開の桜が咲き誇る日系アメリカ人史跡記念広場公園でラジーヴさんと待ち合わせて、いざ5kmルートに出発です。このルートが人気な理由はいくつかあります。まずウィラメット川沿いの美しい景色が楽しめること。もう1つは、アスリート仲間や家族連れ、サタデーマーケットを訪れる人たちでにぎわう街の雰囲気が味わえることです。週末のランニング後は、このマーケットでぜひエネルギーチャージしてみてください。このルートが大好きなラジーヴさんは、ランクラブのメンバーと定期的にこの5㎞コースを周回し、街のエネルギーを吸収しています。
「市外在住の人も、昼休みを活用したい人も、ウォーターフロントにあるこの美しい5kmルートは絶対おすすめ。川の両岸から都市のパノラマビューを楽しむだけでも価値があります」
2つ目のルートはもう少し難易度を上げて、距離と獲得標高を増やしてみましょう。スタート地点のウォレスパークで私たちを待つラジーヴさんは、走りたくて仕方がない様子です。序盤はアルファベット地区の平坦な道を走りますが、ここで体力を少し温存しておきましょう。間もなく壮大な国際バラ試験場を通過し、すぐそばのトレイルを登り始めます。余談ですが、アルファベット地区では通りの名前がすべてアルファベット順になっているので、迷うことはありません。実に便利ですね。
ピトック邸が建つ高台からの素晴らしい景色を眺めながら走ると、ポートランドのトレイルがいかに広大かがわかります。実際、この街には米国国内で最大規模のトレイルのネットワークがあります。大抵のトレイルはよく整備されているので特別なシューズがなくても問題なく走れますが、トレイルランニング用のシューズをお探しの人にはこちらのシューズがおすすめです。
ルートを周回する前、またはランニング後のエネルギー補給におすすめしたいのが、ドラゴンフライ・コーヒーハウスのコーヒーとペイストリー。また、モベリのアサイーボウルやスムージーも試す価値ありです。
5kmコースのスタート地点に戻ってきました。今度はその距離を15kmに伸ばしてみましょう。ポートランドの中心部から走り始めます。するとすぐに「都会的なウォーターフロント」が「それほど都会的でないウォーターフロント」に変わります。これこそが、このルートの醍醐味。お店も車もないため、前を走ることだけに集中できます。直線区間が多く、比較的平坦なルートなので、スピードを出して走りたい人にも、のんびり走りたい人にも適しています。
暑さに負けそうになったら、ウィラメット川でひと泳ぎしましょう。または、雪をかぶった山の尾根を見れば、気持ちだけでもひんやりできるかもしれません。
「ポートランドが『橋の街』と呼ばれるのには訳があります」
「このルートでは、ポートランドで最も美しい2つの橋を渡ります。ランナーが走りやすいよう完璧に整備されているので安心です。ほとんどが平坦な道なので、狙いを定め、集中し、スピードを上げて走れます」
ポートランドの街を走り抜けるこのルートは多少難易度は高いですが、その分やりがいも十分。ランニングを頑張ったご褒美には、グリーンリーフのビタミンたっぷりのスムージーを。リトルリバーカフェでの朝食もランニングの良い締めくくりには欠かせません。
・ 遠くにそびえるフッド山とセント・ヘレンズ山は息を呑むような美しさです。ぜひ注目してみてください。
・ 雨を恐れず、受け入れましょう。
・ 少しの時間で良いので、一息つけて、考えを巡らせ、練習に感謝してみましょう。
・ サイクリストに配慮して走りましょう。道には十分なスペースがあります。
・ 他のランナーにピースサインをしたり、笑顔を交わしたりしましょう。