デヴィッド・ノリスに学ぶ、初心者のためのトレイルランニングガイド
「トレイルは誰にでも開かれている」と語るのは、Onのトレイルランナーのデヴィッド・ノリス。今回は、初心者が近場のトレイルに挑戦する際のアドバイスを聞いてみた。
文:Laura Markwardt 写真:Cole Barash
トレイルランニングと聞くと、ウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)に代表される世界的なウルトラレースをはじめ、最速走破記録や数日にわたる難関コースを思い浮かべるかもしれない。しかし近年では、もっと気軽に参加できるトレイルランニングのコミュニティも大きな広がりを見せている。タイムを気にせずトレイルを楽しみたい初心者にも、冒険のチャンスは身近にあふれている。
米国コロラド州を拠点に活躍するOnのトレイルアスリート、デヴィッド・ノリスは、経験や能力が異なる幅広い層がトレイルランニングに参加するようになったことを受けて「トレイルランニングがここまで人気になったのはすごいことだね」と語る。
トレイルランニングは、身近に山がなくても始めることができる。「誰でも気軽に始められるし、みんなで楽しめるから人気なのも納得だ」とノリスは語る。
ノリスによると、初心者は「30分だけ走るのもいいし、日帰りのアクティビティとしても楽しめる」と言う。最初は焦らずにゆっくり始めると良いだろう。「必ずしもずっと走る必要はない。自分もトレーニング中に上り坂で歩くことがあると他のランナーに教えている」とノリスは語る。
ノリスは、トレイルランニングを「常に変化する路面に順応しながら、林道や山道などのオフロードを効率よく移動すること」と定義している。「トレイルランニングの醍醐味は、ストライドやペース、路面、風景が刻々と変化していくことだ」
「必ずしもずっと走る必要はない」
ノリスは初心者へのアドバイスとして、適切なギアを揃えることと、好奇心を持つことを挙げる。トレイルランニングは基本さえマスターしてしまえば、自然の中で心身をリフレッシュできるだけでなく、環境に応じて体にさまざまな負荷をかけることができる。なだらかな丘陵や林道、家の近くの公園など、まずは自分に合ったルートを選んでみよう。初心者の方は、以下のビギナーズガイドを参考にしてアウトドアを思い切り楽しんでほしい。
トレイルギアと装備
トレイルランニングに最適なシューズとは?
安全かつ快適に走るには、優れたトレイルランニングシューズが欠かせない。シューズ選びのポイントは以下の通り。
- トラクション:アウトソールに深いラグパターンや多方向パターンが施されているものを選ぶと、さまざまな路面でグリップが効く。
- 耐久性:アッパーが丈夫で、つま先部分が補強されているものがおすすめ。
- 履き心地とフィット感:きつ過ぎず、足をしっかりホールドするものを選ぶと、靴ズレを防いで安定した走りを楽しめる。さらに、衝撃を吸収するクッション性や、蒸れを防いで足を涼しくドライに保つ通気性も大事なポイント。
- サポート力と安定性:ミッドソールが硬めで、かかとと足首のサポートがしっかりしているものを選ぶと良い。
- 重さ:軽量で疲れにくく、足の自然な動きをサポートする屈曲性のあるものがおすすめ。
- 耐水性:防水メンブレンや速乾性に優れた素材が好ましい。
「僕のお気に入りのトレイルランニングシューズはCloudvista 2。オールラウンドに活躍してくれる」とノリスは語る。初級トレイルなら、Cloudsurfer Trailもおすすめだ。
専用のウェアは必要?
「まず基本アイテムとして、トレイルランニングシューズとレインコートを揃えよう。僕はよくWaterproof Anorakを持って走るよ」とノリスは語る。
「長距離のトレイルランの際にはUltra Vestを持参する。風が強い時や森林限界を超える高地に行く予定がある場合は、Ultra JacketとUltra Pantsもベストに入れておく。どちらも軽量で、急な天候の変化に対応できるからだ」
トレイルランニングのトレーニング
トレイルランニングにはどれくらいの体力が必要?
「必要な体力はロードランニングと同程度。特別に鍛える必要はない。自分に合ったペースで走れば大丈夫だ」とノリスは語る。
「初心者にとって、トレイルランニングは独特の難しさがあるかもしれない。起伏のある路面は足首が強くないと対応できないし、急な下り坂で足が痛くなるのもよくあることだ。最初はきつく感じるかもしれないが、練習を重ねればだんだん体も慣れる」
「重要なのは、少しずつ体力を付けていくこと。そして、初めてのトレイルランで一日中走るような無茶をしないことだ」
トレイルランニングにおすすめの筋力トレーニングは?
ノリスはトレイルランニングだけでなく、クロスカントリースキーのプロでもある。いずれも持久力を要するスポーツのため、長年のトレーニングで体幹が強化され、有酸素能力が向上した。さらに、ノリスは「筋力トレーニングがカギ」と述べた上で、こうアドバイスする。
「ウエイトトレーニングも取り入れた方がいい。大きな重量で回数は少なめにすること。骨や腱を強くすることが重要なんだ」
また彼は、トレーニングの強度や総走行距離を増やすのは慎重に行うようすすめている。「一気に変化させるのではなく、微調整を重ねることが大切だ」
トレイルでの安全対策
トレイルランニングを安全に楽しむには?
トレイルランの前に基本的な準備をしておけば、問題が発生しても冷静に対処できる。まずは自分のフィットネスレベルに合ったルートを選び、天気予報を確認して必需品を揃えよう。また、出発前にプランやルートを家族や友人に知らせておくことも大切だ。
初心者の場合は、下記の点に留意してトレイル安全キットを準備すると良いだろう。
- 水分補給:十分な水を用意すること。特に暖かい時の長距離ランでは、水分補給が不可欠だ。ハイドレーションパックを使用するのも良いだろう。
- 栄養補給:エネルギーを維持するために、エナジーバーやジェル、補給食を用意する。これは基本的に長距離を走る際に必要になる。
- ナビゲーションツール:トレイルアプリを搭載したフル充電のスマートフォンがあると便利だ。長距離を走るベテランの場合、地図やコンパス、GPSデバイスを持ち歩くランナーもいる。
-応急処置キット:包帯、絆創膏、消毒シート、靴ズレ対策などの基本的なアイテムを含めると良い。
トレイルでの栄養補給:
トレイルラン前・中・後の栄養補給は何がおすすめ?
「週に数回のトレーニングランでは、走行中にこまめに栄養を摂取するようにしている。これはレース本番での栄養補給に胃を慣らすための練習だ」とノリスは語る。
「アウトドアを楽しむだけなら、ピーナッツバターサンドと水だけでも十分。ただ、パフォーマンスを上げたい時は、ジェルが自分の体に一番合っているみたいだ」
「アウトドアを楽しむだけなら、ピーナッツバターサンドと水だけでも十分」
初心者向けトレイルとトレイルランニングコミュニティの見つけ方
地元で初心者向けのトレイルやラン仲間を見つけるには?
「自分はネットでトレイルを検索するか、地図アプリ[OSのマップアプリや Strava]を利用してルートを計画することが多い」とノリスは語る。
「トレイルのネットワークは複雑に見えることもあるので、初めての場所では往復のルートを走るようにしている。そうすれば、道に迷ったり、予定よりも長く走ることを避けられる。地元でラン仲間を見つけたいなら、オンラインで気軽に参加できるランニングクラブを探すのがおすすめだ」
「初めての場所では往復のルートを走るようにしている。そうすれば、道に迷わないからね」
トレイルランニングに対するよくある誤解は?
「トレイルランナーは歩かないと思われがちだけど、実際にはトレイルランの途中でよく歩くし、急な傾斜ではレース中でも歩くことがあるんだ」
なるべく環境に負担をかけずにトレイルランニングを楽しむには?
トレイルでのマナーには、マーキングされたトレイルを守ることや、近道を避けることなどがある。こういったマナーを守ることで、自然を保護し、道に迷うリスクを抑えることができる。
また、上りのランナーには道を譲り、他の利用者に対しても礼節を忘れないことが大切。「立つ鳥跡を濁さず」がトレイルランナーのモットーだ。自然環境に敬意を払って行動しよう。
トレイルランニングをはじめたい人へのアドバイスは? 「とにかく積極的に外に出てほしい」とノリス。「目標を立てて、どんどん新しいトレイルに挑戦するといいよ」