

筋力と持久力、ひとつだけでなくどちらも極めたい――そんな欲張りな願いを叶えるのがハイブリッドトレーニング。どんなレップも距離もラクにこなせるようになります。
多種目をこなすアスリートで『Eat Like a Legend』の著書もあるダン・チャーチルさんは、ラグビー、陸上、水泳、サーフィンと、多種多様なスポーツを楽しみながら育ちました。「これまでずっと、いろいろなトレーニングをやってきました」と語ります。「重点の置き所は徐々に変わってきましたけどね」
チャーチルさんのようにハイブリッドトレーニングの効果を認めるアスリートが増えています。筋力アップのためのストレングストレーニングと持久力トレーニングを組み合わせ、スタミナとスピード、そして回復力に秀でた体を作るこのトレーニング法。身体能力を全体的に高め、怪我のリスクを減らすので、大会出場を目指す人はもちろんのこと、日常生活でもその効果を実感できます。
ハイブリッドトレーニングの成功の鍵は量よりも質。本当に重要なワークアウトを正しくやることが大切です。
ここでは、フィットネスの全般的な向上に役立つハイブリッドトレーニングの仕組みと、個々のニーズに合ったトレーニングプランの組み立て方をご紹介しましょう。
ハイブリッドトレーニングで大事なのはバランスです。筋力トレーニングまたは有酸素運動など、どれかひとつに絞るのではなく、筋肉に抵抗をかけるレジスタンストレーニングと、持久力トレーニング、そして機能的エクササイズを組み合わせて総合的な身体作りを目指します。
「ハイブリッドトレーニングとは複数のトレーニング種目を含むもの、と考えています」とチャーチルさん。「例えば、十種競技、五種競技、トライアスロン、バイアスロンがそうですし、最近登場した筋トレと持久力を鍛えるHYROX(ハイロックス)トレーニングも良い例です。ジムでウェイトリフティングをしつつ、ランニングも好きという人は多いですよね。その両方を行うのがハイブリッドトレーニングなのです」
有酸素運動または筋トレのどちらに重点を置くにしても、自分の目標に合わせてプログラムを構成できるのがハイブリッドトレーニング。どこに力を入れるかで、有酸素トレーニングとの違いが生まれます。
フィットネスのレベルを問わず、きちんと体系化されたハイブリッドプログラムをこなせば、ウエイトの重量アップや、長距離ラン、より幅広い運動へのチャレンジが可能になるでしょう。
エリートレベルのパフォーマンスを目指すには、ひとつの種目に特化するのが一番の近道だと思われがちですが、それは誤解です。実際は、ハイブリッドなトレーニングを行うことで総合的に運動能力とレジリエンスが鍛えられ、効率的かつ継続的に実力を伸ばすことが可能となります。
ジュニアのスポーツでは、早期に的を絞りすぎないことで運動技能が向上し、やり過ぎによる怪我のリスクが減り、自信もつくと言われていますが、これはそのまま大人にも当てはまります。最近は多くのプロアスリートが、怪我をしにくく競技で勝てる身体を手に入れるために、ハイブリッドなトレーニング法を取り入れています。
ハイブリッドトレーニングは、総合的に運動能力が高く適応力も優れたアスリートを作ります。多くのランナーやジム愛好家が多種類のトレーニングを組み合わせているのも、それが大きな理由です。
ダン・チャーチルさんは、ハイブリッドトレーニングのおかげでマラソンのタイムを短縮できました。「マラソンの練習を始めてしばらくの間はエネルギー不足に悩んでいました。でも意識的にハイブリッドトレーニングを行うようになってから筋力をキープでき、むしろ増えていって、結果的にタイムが向上したのです」
スクワットやデッドリフトなどの筋トレをすれば、トレイルランニングに必要な体力がつきます。その一方、持久力トレーニングをすればスタミナがつき、ウエイトリフティングに必要な筋持久力がアップするのです。
「筋肉に効率的に酸素が供給されるようになり、閾値も改善しました」とチャーチルさん。「脚の筋力がアップしてマラソンのタイムに反映されたし、スピードの向上はジムのトレーニングにも活きています」
ハイブリッドトレーニングで全身を鍛えると、ジムでトレーニングする時だけでなく、買物の荷物を運んだり階段を上ったりといった日常の動作もラクに行えるようになります。
筋トレと有酸素運動の組み合わせでエンドルフィンの分泌も促されるため、気分とエネルギーレベルもアップ。トレーニングを続けて体を動かすことが自然な習慣になれば、自信がつき、「今の自分」に集中しやすくなり、日々のどんなタスクもこなせるようになります。
毎週同じワークアウトを繰り返していると、モチベーションが下がり、進歩も見えにくくなるもの。多種目をこなすハイブリッドトレーニングなら、身体に新たな挑戦を課しながら特定の筋肉群にリカバリーの時間を与えることができ、飽きがくることもありません。
多種多様な動きをすることで怪我のリスクの軽減はもちろん、筋力と持久力を並行して強化するので停滞期も乗り越えやすく、順調な身体作りが期待できます。
ハイブリッドトレーニングを競技の形にしたのがHYROX(ハイロックス)レースです。チャーチルさんによれば、「CrossFit(クロスフィット)もハイブリッドトレーニングの一種ですが、筋力に重点を置いています。HYROXの方がランニングを重視していますね」
HYROXは、次の8種類のファンクショナルワークアウトを、間に1kmのランをはさみながら次々にこなしていくレースです。
- スキーエルゴ
- スレッドプッシュ
- スレッドプル
- バーピーブロードジャンプ
- ローイング
- ファーマーズキャリー
- サンドバッグランジ
- ウォールボール
それぞれのエクササイズで試されるのは筋力、持久力、そしてメンタル面のスタミナ。それはまさに、ハイブリッドトレーニングが競技者にとって重要である理由です。チャーチルさんは、自分の弱みを強みへと転換することに一番力を入れているそう。
「走るだけでなく、さまざまな筋力とスキルが求められます。だから自分の強みだけに頼って乗り切るのではなく、いつも苦労する部分を重点的に強化することにしました。おかげでタフな場面も切り抜けられるようになりましたね」
公式のレースや大会に参加する予定がなくても、ハイブリッドトレーニングはおすすめです。大切なのは現在のフィットネスレベルを見極めて、自分に合ったプランを立てること。
「紙に書き出してもいいですし、予め用意されたプランもあるので探してみましょう」とチャーチルさん。「なんとなく無計画に始めても長続きしません。4週間、6週間、8週間など期間を決めてしっかり計画を立てれば、目指す方向が定まります」
まず、自分の強みと要改善分野を明らかにしましょう。そして、目指す方向に沿っていて、なおかつ今まで試したことのない難しめのワークアウトをミックスします。
チャーチルさんは毎週日曜の夜にプランを見直しています。「ランニングコーチがくれる計画を確認し、そこにHYROXに必要なトレーニングを組み込みます。例えば特定の動きの強化とか、心拍ゾーン4のワークアウトなどですね」
ハイブリッドトレーニングでは、筋トレとランニングのほか、ファンクショナルムーブメントと、モビリティーエクササイズも加えて総合的に計画します。毎日、異なる部位を鍛えることで、新鮮な気分で楽しみながらコンディションを整えられます。また、オーバートレーニングに陥る危険性がないことも重要です。
例えば、一週間の計画に次のようなルーティンを組みこんでみましょう。
- 上半身の筋トレ
- 一定強度の有酸素運動
- 軽い運動のみを行うアクティブな休養日
- 下半身の筋トレ
- スピードインターバル走
- ファンクショナルエクササイズ
- 休養日
このように戦略的にバリエーションを加えれば、それぞれの筋肉群に回復のための時間を与えることができ、いっそう力強い成長が望めます。
トレーニングは適切なアパレルとシューズで取り組みましょう。ハイブリッドトレーニングに必要なのは、通気性に優れたレイヤー、パフォーマンスショーツ、そしてジムのフロアから屋外のランまでこなせるサポート性の高いシューズです。
チャーチルさんは次のようにワークアウトの種類にごとにシューズを替えています。
- 心拍ゾーン2のランにはCloudmonster 2s
- スピード走にはCloudboom Strikes
- ウエイトトレーニングと高重量スクワットにはClubhouse Pros
「それぞれのエクササイズにどのシューズが適しているかが分かるようになり、シューズに対する考え方が変わりました」とチャーチルさん。そしてウェアも目的に合わせて準備しましょう。ランニングには5” Performance 2/1 Shortsなどのパフォーマンスショーツが、クロストレーニングには幅広い動きに対応するFocus Shortsなどがおすすめです。
トレーニングプランには身体を回復させるための時間を必ず組み込みましょう。チャーチルさんも、「リカバリーには真剣に取り組むよう心がけている」と言います。「リカバリーを一つのセッションとして扱うと、トレーニングに対する考え方が大きく改善します」
ワークアウトの後は軽く体を動かしたり、ストレッチやヨガでクールダウン。睡眠をきちんととり、十分な水分と栄養補給を心がけてリカバリーを促します。チャーチルさんは規則的な睡眠習慣を守るようアドバイスしています。「それが成功への道です」
人間の体は7~9時間眠ることでリセットされ、回復します。寝る前のスクリーンタイムは最小限に抑え、暗くした部屋は温度を低めに設定すること。そうすれば翌朝、目覚める頃には、次のワークアウトへの準備が整っているはずです。
ハイブリッドトレーニングは過酷です。それに合わせて栄養補給にも注意を払いましょう。チャーチルさんはセッションごとに十分な時間をおき、その間にきちんと食事をとるようにしています。
ワークアウト開始の1~3時間前にバランスのとれた食事をとりましょう。時間がない場合でも、空腹のまま体を動かすのではなく、30~60分前に軽食をとるようにします。
ワークアウト前のおすすめは、フルーツやグラノラ入りのヨーグルト、バナナとピーナツバター、ジャムつきのトーストなど。ワークアウト後は、ターキー入りラップサンドやプロテインシェイクなど、炭水化物とタンパク質の組み合わせでエネルギーを回復しましょう。
水分補給も欠かせません。一日を通じてこまめに水を飲むこと。長時間または高強度のエクササイズを行う際は電解質も補給してください。体が発するサインに気を配りながら、喉の渇きを覚える前に積極的に水分を取るようにしましょう。
自己ベストの更新を目指す人にも、楽しく続けられるエクササイズを探している人にも、ぴったりなのがハイブリッドトレーニング。
「いつものトレーニングに行き詰まりを感じたら、停滞期に突入したか、単に楽しめなくなっているかのどちらかです」とチャーチルさん。「やる気が湧くような新しいゴールを設定しましょう。人がどう思うかなど気にしないこと。自分がやりたいことを重視すれば、長く継続できるプランを組み立てられますよ」
ハイブリッドトレーニングにぴったりのギアを探すなら、Onのトレーニングコレクションをぜひご覧ください。多様なニーズに合わせて設計されたシューズとアパレルを豊富に取り揃えています。あなたもいろいろな種類のトレーニングを組み合わせて、ハイブリッドなアスリートを目指してみませんか?