

限界まで頑張ったトレーニングの後は、体をしっかり元に戻しましょう。正しくリカバリーを行えば、いっそうパワーアップできます。素早く疲労回復してスマートにトレーニングするための、プロがすすめるアドバイスをまとめました。
「リカバリーは非常に重要です。シンプルなようで、きちんとやるのは難しいのですよ」と語るのは、On Athletics Club(OAC)のアシスタントヘッドコーチ、ケルシー・クィン。
睡眠を十分にとる、トレーニング前後の食事を計画する、ストレッチの時間も確保する――リカバリー自体が一種のトレーニングのように思えるかもしれません。しかし、トレーニングをすれば毎回必ず筋肉に細かな断裂が生じ、体内に蓄えたエネルギーも損耗します。リカバリーのやり方次第で、いっそうパワーアップできるか、怪我を回避できるかが決まってくるのです。
ここでは、どんなにタフなトレーニングをした場合でも、その後の回復を早める科学的に証明された8つの方法をご紹介します。
リカバリーはトレーニングの前から始まっています。適切なギアを身に着けることで体への負担が軽減され、回避可能な怪我の防止にも役立ちます。
例えば、サポート力抜群のCloud X 4は、横方向の安定性も高くクッション性にも優れているため、シンスプリントや足底筋膜炎などの問題も起きにくくなります。ウェアは摩擦や刺激の少ないソフトで通気性のよい素材のものを選びましょう。内ももや脇の下などには皮ふ保護バームを塗れば、擦れやすい部分を守れます。
快適な状態を作ることで、思いっきり体を動かしながら最後まで全力を出し切れるようになります。思い通りにトレーニングを行い、スムーズに素早くリカバリーするためには、質の高いウェアに投資しましょう。
体温調節やけいれんの予防、関節の動きを滑らかにし、必要な場所に栄養素を届けるなど、水分補給はトレーニングのあらゆる面で重要になります。その影響は、ワークアウトを始める前から終えた後まで長い間、続きます。
「便通が不規則だったり、唇がひび割れたりするのは脱水症状やリカバリー不良のサインです」と指摘するのは、『Eat Like a Legend』の著者でアスリートでもあるダン・チャーチルさん。「メンタル的にすっきりしないとか、認知力が弱っていると感じるのも赤信号ですね」。長年のトレーニングとコーチングを通じて、こうしたシグナルに注意することの大切さを学んだと言います。
運動中はこまめに少量の水を飲んで、体の渇きのサインに対応してください。トレーニング終了後、特に高温・多湿な状況で運動したときは、必ず水分と電解質を補給しましょう。ココナッツウォーター、スポーツドリンク、電解質タブレットを利用すれば、体内のバランスを保ちながらスピーディーに回復できます。
リカバリーで軽視されがちながら実はとても重要なのがクールダウン。激しい運動を急にやめるとコリや痛み、さらには怪我につながる恐れがあります。体を酷使した後は軽い動きやストレッチをしながらスローダウンして、スムーズにリカバリーモードに移行できるようにしましょう。
クールダウンの良い点は時間がかからないこと。例えば、トレーニングのランを早めに切り上げて、最後の1分は歩くようにします。これは明日の自分への小さな贈り物、あるいは頑張ったことへのご褒美だと考えましょう。最後は、5分から10分ほどの簡単な運動で締めくくるのが理想です。
軽めのジョギング、静的ストレッチ、ヨガなどで体をクールダウンし、リカバリーの最初のステップを踏んでおくことで、いっそうパワーアップして次のトレーニングに臨めるようになります。
「いつも体の声に耳を傾けています。例えば、脚がひどい筋肉痛なら、コンプレッションワークとモビリティに重点を置くようにします」と語るチャーチルさん。リカバリーには、両脚を高く上げること、ボックスブリージング(呼吸法)、そして瞑想を取り入れているといいます。
リカバリーをスピードアップさせたいなら、ストレッチをすれば手軽に血流を促進して体の柔軟性も高まるため、コリや筋肉痛を予防できます。大腿四頭筋やふくらはぎ、股関節屈筋など、こわばりを感じる部分を中心に、それぞれ20~30秒間ストレッチをしてください。
坂道を走った後であれば、大腿四頭筋をゆっくり伸ばしたり、股関節を深く曲げるランジをすることで、たまった緊張をほぐせます。フォームローリングも、特にハムストリングスや大腿四頭筋のような大きな筋肉群に効果的です。
どんな方法を取るにせよ、必ず意識的な呼吸をしながら行いましょう。正しくコントロールしながら呼吸することで気持ちが冴え、ストレッチも深くできるようになります。また、休息と修復をつかさどる副交感神経系も活性化されます。多くのアスリートが動きと呼吸、マインドフルネスを総合的に実践できるヨガをリカバリーの一環にしているのはそのためです。
チャーチルさんは、週が始まる前からすでにリカバリーをスタートさせています。「毎週の食事は念入りに計画しています。必要なカロリーを計算して、どのような食品から摂るかを正確に把握することで、カロリー不足に陥らないよう気を付けています」と、ハイブリッドアスリートで作家の彼は語ります。
特にリカバリーのスピードや効率性に影響するのが、トレーニング後の食事です。チャーチルさんは毎週日曜日に、睡眠、水分補給、レッドライトセラピーを組み込んだ1週間分のスケジュールを立て、意識的な行動を心がけています。
持久力トレーニングの後は、炭水化物とたんぱく質を4対1の割合で摂取することでグリコーゲンを補給し、筋肉の修復を促しましょう。おすすめはギリシャヨーグルトとグラノーラ、クリームチーズを塗ったベーグル、鶏肉のパスタなどです。そして筋力トレーニング日は、筋肉の成長を促すためにたんぱく質を多めに摂りましょう。
「遅発性筋肉痛になったら摂取カロリーを増やします。時に1日500キロカロリー以上余分に摂ることもありますね。たんぱく質も増やします。すべてはリカバリーを促進するためです」とチャーチルさんは続けます。食事は、体が栄養素を最大限に活用できるよう、トレーニング終了から数時間以内にとることが大切です。
プロテインパウダー、クレアチン、鉄分、ビタミンB12、マグネシウムなどのサプリメントは、運動後のリカバリー補助として、特にランナーの間で人気があります。便利なのは早朝のトレーニング後のスムージーに混ぜる方法。手軽に栄養補給と筋肉修復ができます。
とはいえ、誰もがサプリメントを必要としているわけではありません。体が必要とするものは人によって異なるもの。鉄分不足などのリカバリーに影響しうる欠乏症があるかは、血液検査で確認してください。不安がある場合は、新たなサプリを試す前に医師や栄養士に相談しましょう。
目的に合った適切なサプリメントの利用は運動前、運動中、そして運動後のパフォーマンスと回復の両方に役立ちます。
睡眠は単なる休息ではなく、本格的にリカバリーするために身体が必要とする時間です。ぐっすりと眠っている間、タンパク同化ホルモンが筋肉組織を修復し、グリコーゲンを回復、免疫機能をサポートします。質の良い睡眠をとることで炎症も抑えられ、遅発性筋肉痛(DOMS)の症状も緩和されます。
「トレーニングのしすぎよりも、リカバリー不足こそが問題になりがちです」と指摘するのは、OACヘッドコーチのデイゼン・リツェンハイン。「リカバリーはすればするほどいい。マッサージ、理学療法、栄養補給、休養のどれも効果的です。前のセッションからきちんとリカバリーしないことには、次のセッションへの準備も整いません」
質の良い睡眠をとることで集中もしやすくなり、身体のコーディネーション能力も向上。怪我のリスクも軽減されます。毎日、夜間に7~9時間の睡眠をとるよう心掛けましょう。寝室は暗く涼しくして、寝る前のスクリーンタイムを制限し、心地よいナイトウェアに着替えます。それでもよく眠れない場合は、睡眠時無呼吸症候群などの健康問題がないかをチェックするためにも、睡眠検査を受けるといいでしょう。
同じ筋肉を毎日鍛え続けると回復のスピードが落ち、怪我のリスクも高まります。そこでおすすめなのがクロストレーニング。ハードなトレーニングの翌日は軽めの運動をして、ストレスを増やすことなく血行を促進させましょう。
「1日2回セッションをするようになった途端、リカバリーにもっと重点をおくべきだと気がついたんです」と話すチャーチルさん。「ルーティンを変えれば、リカバリーのニーズも変わるのだと身をもって知りましたね」
クロストレーニングは激しいものである必要はありません。ランニングの代わりに20分のウォーキングや軽い水泳、低強度のヨガなどを取り入れましょう。筋力アスリートも、鍛える筋肉群をローテーションで変えることで積極的リカバリーに努めています。大事なのはバランスです。"よりハードに"ではなく、"よりスマートに"トレーニングすれば、伸び悩みにぶつかることも、燃え尽きることもなく上達することが可能です。
進歩は、ワークアウトではなくリカバリーによって実現します。マラソンに向け練習中の人も、トレーニングルーティンを構築中の人も、リカバリーは初日からしっかり計画に組み込みましょう。
「エネルギー、消化、水分補給、メンタルの強さなどがすべて整ったと感じれば、次のセッションへの準備ができたということです」と言うチャーチルさん。
正しい栄養管理から適切なトレーニングシューズへの投資にいたるまで、万全に準備することが良好なパフォーマンスにつながります。リカバリーは優先的に行いましょう。そうすればきっとパフォーマンスの向上も望めるはずです。