

上り坂を走るという戦いに挑むと、誇らしい気分になれます。でも良いことはそれだけではありません。あまり意識することはないかもしれませんが、上り坂を走るのには、実は他にも大きなメリットがいくつかあります。パフォーマンスの強化や、トレーニングルーティンに与えられる変化など、上り坂を走るべき7つの大きなメリットをご紹介します。
地理的に特殊な場所でないならば、坂道を1つや2つ走るのはランナーとして避けられないこと。最初は気が遠くなるほどつらいかもしれませんが、上り坂を走ることには、ランナーとしての能力や、全身の健康状態を素早く強化するのに有効な、たくさんのメリットがあります。ランニングを始めたばかりの人でも、ベテランランナーでも、いつものトレーニングに坂道を取り入れれば、素晴らしい効果を得られます。
ウルトラランナーでOnのアスリートとしても活躍するフロリアン・ノイシュワンダー選手(Florian Neuschwander)は6月13日、累積標高2000mのフルマラソンを3時間未満で完走しました。その際に試したのは、自分の高速ペースのランニングスタイルです。今年初め、既に50㎞のトレッドミルで記録を樹立したノイシュワンダー選手。耐久ランニングを「can-do(やればできる)」という積極的な態度で挑むことで知られています。
ノイシュワンダー選手ほど速く走れなくても恐れることはありません。そんなスピードで走れる人はほとんどいませんから。上り坂と下り坂を走ることは、身体に大きな負担をかけることがあります。しかし、上り坂を走ることには、ランナーが気付かないかもしれない実に重要なメリットがいくつかあります。
まずはノイシュワンダー選手が標高差がある山道のロスフェルトパノラマシュトラッセ(Rossfeld Panorama Strasse)をどう走り抜いたのか話を聞きましょう。
フロリアン・ノイシュワンダー:これまでの人生の中でたくさんのマラソンを走ってきました。もう数えきれないほどです、おそらく100回、トレーニングではもっと多く走ったかもしれません。ただ累積標高が2000mに及ぶマラソンは挑戦したことがありませんでした。
この観点から自分自身を試してみたい。しかも、良いタイムで走りたいと思いました。トレイルではそのような良いペースを保つことができないので、私はルートを探しました。そしてロスフェルドパノラマ ストラッセを見つけたんです。
累積標高は1000mです。そこで私は心の中で思いました、「よし、坂道を2回上って下ればいいんだ」と。
私は上り坂を走るのが大好きです。最後に山の上に立って素晴らしい景色を眺められるからです。頂上から見下ろして、自分が走ってきた道のりを目で辿るのはとても気持ちの良いものです。特に本当にきつい登山をした後は、ただ頂上に座ってリラックスするだけで、満ち足りた清々しい気持ちになります。
上り坂のランニングはランナーを強くします。坂道を走った後に平坦な道を走ると、まるで飛んでいるように走れます。外に出て、次に走る山を探しに行くのが好きです。まるで冒険に出たような感じがします。自分に挑戦することもあれば、ストレスのかからない程度に気楽に走ることもあります。
最初の上りと下り坂は全く問題なくリラックスして走れました。私の計画は、時間が半分に差し掛かるまで快適に走ることでした。
2度目の上り坂は本当にきつかった! その時点で既に気温は高くなっていたし、焼けつくような日差しが照りつけていました。懸命な努力をして、時間は瞬く間に過ぎていきました。最初の半分を走り終えた時、私のサブスリーの目標のうち、およそ1時間半が経過していました。しかも2度目の登山では大幅に時間をロスしました。坂を上り切った時にはとても疲れていましたが、後は「わずか」10㎞の下り坂が残っているだけでした。
ですから、最後の9㎞は自分を駆り立てて、3:09 min/kmのペースでゴールできるように走りました。ギリギリでしたが、2時間59分42秒でゴールし、3時間以内という目標は達成できました。
1. 持久力とスピード
持久力とスピードには、どのようなランニングにも必要な要素です。上り坂のランニングは、その両方に同時に働きかけるというメリットがあります。
上り坂を走るときに必要なエネルギーは、最初はきついものですが、長い目で見るとより多くの燃料を蓄えることになります。また、目標達成に向けて大きな役割を果たすことができる精神的な持久力を高めることができます。
スピードに関して言えば、上り坂を走る時は、通常スプリントのためだけに使われるのと同じ筋肉が使われます。坂道を繰り返し走ることは、あらゆるスプリンターのトレーニングメニューの重要な部分を占めています。
繰り返し坂道を走る際は、数百メートルの上り坂を全力で走り、ジョギングしながら坂を下って正常な状態に戻るようにします。それを繰り返します。これは実に単純なことですが、上り坂に対する自信とスピードを素早く高めるための優れた方法です。
2. VO₂の増加
上り坂を走ることで、足に大きな負担がかかり、心拍数が有酸素運動ゾーンに急上昇することがありますが、身体は潜在的に著しいVO₂の増加を経験しています。VO₂ max(最大酸素摂取量)は、体がどれだけ多く酸素を摂取できるかを示す数値です。VO₂ maxが高いほど、体が酸素を取り込んで、より多く筋肉に送り届けることができるため、より走りやすくなります。
科学の講義は省略することにして、要点を説明します。上り坂を走ると心肺フィットネス(心肺持久力)が向上し、筋力・スピード・体力がすばやく向上します。最初は坂道をつらいと感じるかもしれませんが、トレーニングのルーティンに取り入れてVO₂ maxを増加させることで、平坦な道を走る際のタイムを縮められるようになります。
付加的なメリットは? 疲労を感じるのが今までよりも緩やかになって回復が早くなり、ストレスが軽減されます。悪くないですよね。
3. カロリー
カロリー燃焼を目標にして走る時、多くの人は走る距離を延ばした分だけカロリー燃焼も増えると思っています。確かにこのシステムから求める結果を得られるかもしれませんが、それよりもずっと時間のかからない(しかも多様な)方法で、同じ目標を達成できます。
スピードを早くする必要も距離を延ばす必要もありません。それよりも、ランニングに坂道を取り入れるだけで、すぐに余分なカロリーを消費することができます。実際のカロリー消費量は傾斜の角度によって異なりますが、全体として、より短い時間で目標を達成できるはずです。そして、可能な限り上り坂を走る挑戦を楽しんでください。
4. 筋力
上り坂を一種の筋力トレーニングだと捉えてみましょう。
上り坂のランニングは平坦な場所でのランニングよりも身体を直接的に鍛えます。ウエイトリフティングが向いていないのであれば、上り坂を走るのはその次に効果的な方法です。
もちろん、ふくらはぎや臀部に筋肉がつきますが、上り坂を走る時には体幹を引き締めて腕を振ることに注意を注ぐことが大切です。そうすれば、体幹と上半身の筋肉も鍛えられます。
5. 競技会・大会
レース開催がいつ再開するかはまだ分かりませんが、いつでも参加できるように準備をしておくことは大切。ハーフまたはフルマラソンのトレーニングでは、そのために必要な時間と距離を組み込みましょう。
上り坂のランニングは、どんなトレーニングスケジュールにも確実にプラスになる項目です。それらのあらゆる有酸素運動によって持久力が強化されれば、レースのための身体づくりは完璧です。
また、レーストラックで坂道に出くわすこともあるので、精神的にも身体的にもレースのそのような局面に備えておくとよいでしょう。
16週間かけてレースの準備を整えよう。初心者のためのOnのマラソンガイド。
6. ケガの予防
ランニングによるけがを予防する最良の方法は、あらゆる種類の地形でトレーニングすることです。とはいえ、いきなり坂を上ったり下りたりするところから走り始めるのはおすすめしません。上り坂に挑む前に平坦な道を走って、しっかりウォームアップするのがよいでしょう。
上り坂を走るには、しっかりしたウォームアップと優れた技術、そして「気力で乗り切る」態度が必要です。また、下り坂を走る場合は、膝の関節への衝撃を和らげるクッション性に優れた安定性のあるシューズで走りましょう。
7. 変化
率直に言えば、最も優れた一貫性のあるランナーでさえ、時々違う景色の中を走りたいと切望するものです。平坦な道を走るのがあなたのお決まりのコースならば、坂道を取り入れてみましょう。
坂道を上るために必要な精神力については、きっと大きな違いを感じられるでしょう。ですから、退屈を感じる暇などありません。
また、頂上に到達した時の満足感は実にすばらしく、常に変わり続ける眺めには心を忙しく保つ驚くべき効力があります。
さて、メリットが分かったところで、実際に挑戦してみましょう。それから、上ったら下らなければならないこともお忘れなく。上り坂を懸命に走り抜いたら、しばし眺望を楽しみ、リラックスして坂を下りましょう。
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