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ビーミッシュと​​ファルケンに​​学ぶ ビギナーの​​ための​​インターバルトレーニング

世界室内陸上を​​制した​​パワフルな​​走りを​​得意と​​する​​ニュージーランド人ランナー、​​ジョージ・ビーミッシュと、​​Onの​​陸上競技スターである​​ロベルト・ファルケンに、​​インターバルトレーニングを​​とおして​​ペースアップを​​目指す方​​法に​​ついて​​聞きました。​​

文:Laura Markwardt   写真:Frankie Carino、Lea Kurth、Colin Wong(ポートレート)

ランニング初心者なら、まずはゆっくりと持久力をつけ、きちんとしたランニング技術を身につけましょう。そしてペースを上げられるところまで自信がついた時点でインターバルトレーニングを取り入れると、大きな効果が望めます。初心者のための​​5km走破メニューを試したことがある人にはすでにおなじみのこのトレーニング方法では、全力疾走とジョギングなどでのレストを組み合わせたセットを何度も繰り返します。

インターバルトレーニングなら短期間で筋力とスピードがアップし、スタミナも強化されます。経験豊かなランナーであれば走りのレベルが上がり、新たな自己ベストも狙えるでしょう。

「トレーニングでは軽めのランと長距離ランに加えて、インターバルトレーニングにも力を入れているよ」とドイツ室内陸上競技選手権大会800mで3度の栄冠に輝くドイツのスター選手、ロベルト・ファルケンは言います。 

一方で、2024年世界室内陸上競技選手権大会1500mで金メダルを獲得したOn Athletics Club(OAC)所属の中距離ランナー、ジョージ・ビーミッシュはこうアドバイスします。「アマチュアなら、インターバルトレーニングはある程度身体ができるまで待った方がいい。高負荷のトレーニングを加えなくても、軽いランやテンポラン、ヒルスプリント、長距離ランから得られるものは沢山あるからね」 

「アマチュアなら、インターバルトレーニングはある程度身体ができるまで待った方がいい」


OACの仲間からは「教科書通りのジョージ」と呼ばれるほどホームストレートでの安定した走りをみせるビーミッシュは、ここぞという場面で効果的に全力ダッシュすることでライバルを引き離す戦略をマスターしています。インターバルトレーニングに取り組む準備ができた人のために、その始め方をビーミッシュとファルケンに聞きました。

インターバルトレーニングとは? 

インターバルトレーニングでは、まず短時間、できるだけ早いダッシュなど高負荷運動をします。次にウォーキングなどの「身体を動かす休憩」でレスト時間を取り、再度、強度の高い運動を繰り返します。このトレーニングでは、通常セットやセッション単位でメニューをこなし、徐々に強度を上げていきます。

長期に計画的に続けることで大きな効果が期待できるインターバルトレーニング。でも、レース本番前は体力温存のために軽めな調整で済ませることも大切です。 

ビーミッシュはこう語ります。「インターバルトレーニングにはコツがいる。どの程度の強度なら身体が消耗しないか理解が必要なんだ。このトレーニングを競争のノリで行って、レース当日にスタミナ切れになる人も結構いるよ」

「インターバルトレーニングを競争のノリで行って、レース当日にスタミナ切れになる人も結構いるよ」


HIIT(高強度インターバルトレーニング)とも呼ばれるこのトレーニング法は、ランニングのみで行う場合もありますが、強度の高いその他のワークアウト、たとえばマウンテンクライマーやバーピー、腕立て伏せなどを差すこともあります。訓練を積んだアスリートであっても練習で毎回全力で走るわけではなく、おそらくトレーニングの大部分は楽なペースの走りです。「ファルトレク」と呼ばれるトレーニング法もあります。スウェーデン語で「スピードプレー」を意味するこの方法では、パターンを決めずにインターバルをランに取り入れます。たとえば最寄りの木や道路標識などを目標にしてそこまでダッシュする、という具合に。

インターバル走をすべき理由は? 

安定したペースで走れるようになったら、数週間でインターバルトレーニングによるランニングのレベルアップ効果を実感できるはずです。そしてStravaの平均ペースのアップも。通常の長距離ランに比べ短時間でできて、ペースにも緩急をつけられるインターバル走の方が好みだというランナーもいます。全力で集中的に高強度の走りに取り組むのは効率がよいためです。 

ファルケンもその一人。「インターバルトレーニングだといつもより時間が早く過ぎるね。短時間でより多くの効果を実感できるんだ。たとえば8分のセットを5回行えば、それだけで40分のトレーニングをハイペースでこなしたことになる。そこにウォームアップとクールダウンを加えれば、それはもう立派な1つのセッションだ。その方がひたすら1時間走り続けるよりもラクに感じるんだよね」

「インターバルトレーニングだといつもより時間が早く過ぎる」

連続的な持久力エクササイズに比べて、インターバルトレーニングは最大酸素摂取量(VO2 max)を高めます。これは高負荷運動中に身体に取り込むことのできる酸素量のことで、フィットネスレベルを上げたいなら、このVO2 maxの向上がカギになります。消費できる酸素量が多ければ、疲れを感じる前に、より速く、より遠くまで走れるからです。

加えてインターバルトレーニングには、一定のペースで走るよりも、運動量が限界に近づいた時に心臓が体内に送り込む血液を増加できるという効果もあります。

「インターバル走は好きだよ。気分転換になるし、レストなしの長時間ランとは異なる難しさがある」とファルケン。エンジンをアップグレードして、パワーブースト状態でトラックやトレイルに臨むようなものだと考えるとわかりやすいかも。この影響は筋力面にも及びます。 

インターバル走には、筋肉細胞内のミトコンドリアのサイズと数を増加させる効果があります。この小さなスーパーヒーローたちがエネルギー工場の役割を果たし、筋肉がより長いあいだ大きなエネルギーを作り出す手助けをしてくれるため、ゴールを前に必ずダッシュで終われる余裕も生まれるのです。

インターバルトレーニングはどのように始める?

本格的にインターバル走に取り組むには、「やる気」以上のものが必要になります。ビーミッシュはこう助言します。「最近ランニングを再開したばかりなら、まずは基本のテンポランとヒルのセッションに専念するのがおすすめだよ」

ファルケンは、一番大事なのは「自分のトレーニングを信じること」だと言います。 

「セッションの終わりに平均速度だけを見るのではなく、トレーニングで最も効果を上げている目標点がどこなのか注目するといい」

仲間と取り組むインターバルトレーニング

やる気を持続させるために仲間と一緒にトレーニングするのは良いアイデアのように思えます。けれど、他のOnアスリートとトレーニングしたこともあるファルケンは、トレーニングパートナーが高負荷のランで自分よりも軽々と走るなら、無理に合わせないことが重要だとも。

「悔しいだろうし、自分もそのレベルに達したいと思うだろう。でも、自分の限界を超えない範囲で効果的に訓練を重ねてはじめてハードルを越えられるんだ。それには時間がかかるし、そこを乗り越えてこそレベルもアップする。あまりにも早くからキツすぎるトレーニングをしたからってランナーとしての能力が上がるわけじゃない」とファルケン。「自分を信じること、そして自分の限界を超えないように気を付けた方が上達するよ」

「他の人のタイムやスプリットと比べないこと。これはどんな人にも当てはまるアドバイスだ。誰かと一緒にワークアウトすると『よし、相手のペースに合わせよう』と思って結局無理し過ぎてしまうことがある。キツいと思ったらそれを認めて、少しペースを落とした方がいい」

トム・エルマーとのセッションでは『もう限界、ついていけない』と思ったよ」とファルケンは笑います。「でも彼が『残りあと2セット』と言うから必死で頑張った。お互い励ましあいながらセッションをこなしたんだ。キツければ素直にそれを認めるのもアリだよね」

「反対に余裕でこなせていてもっとペースを上げたいなら、それはそれで認めるのもいい。ただし、トレーニングをある種の競争にするのではなく、自分の現況をはっきり伝えること。全員で話し合いセッションの目的を決めて、みんなが納得するトレーニングプランを立てることが重要なんだ」

インターバルトレーニングにはどんな服装が最適?

ダッシュでスピードを出すときも、あいだのゆったりしたペースのときも、快適なギアを選びましょう。この両方の条件をかなえてくれるのが、 Performance Long-T。どんなコンディションにも対応する快適な設計で、結果を叩き出すことだけに集中できます。アウターにはWeather Vestがおすすめ。トップスピードで走り続けられる軽さと、リカバリー中の身体を守ってくれる保温性を備えています。

シューズは反応性が高くしっかりサポートしてくれるスピードモデルが最適です。ベテランランナーにおすすめなのは、カーボンプレートでスピードを発揮し着地時のクッション性も抜群の、Cloudboom Strike。自然に足が前に出る滑らかな走りを求める初心者には、Cloudsurfer Nextが良いでしょう。

インターバル走はロードやトレイル、ときに坂道も利用することもありますが、多くの場合はトラックで行われます。インターバルのセットでは400mの周回走路を走ることが多いため、走りながら残りの距離も把握しやすいのです。「坂を使ったヒルトレーニングもとてもおすすめだよ」とビーミッシュは言います。「軽いペースのランの後に上り坂を10秒から20秒で駆け上がるのを6~8回繰り返すと、大きな効果を期待できる。坂は、ケガのリスクも少なくて努力した分だけ報われる。トレーニングに加える価値はあるね」

「坂は、ケガのリスクも少なくて努力した分だけ報われる。トレーニングに加える価値はある」


インターバル走は時間か距離で区切ることができるため、GPS付きのランニングウォッチがあれば便利です。心拍計を利用しているなら、心拍ゾーンをもとにインターバルを決めてもよいでしょう。ビーミッシュはこう言います。「基本的には意図的にゾーン2で走る、みたいなことはしないかな。本番に向けて、自分の感覚や身体の調子を確認しながらペースを決めて走っているんだ」

インターバル初心者なら、まずは400mのダッシュとレストを8セットこなしましょう。慣れてきたらダッシュの距離を伸ばすか、リカバリー時間を短くします。

通常、レスト時は完全に休むのではなくアクティブに過ごします。ダッシュから軽めのジョギングへと切り替え、時間がきたら再度ダッシュできるくらいに、ゆったりしたペースで回復することが重要なポイントです。

初心者のためのインターバルセッション

無理のないペースでウォームアップ走1km、ダッシュ400m、ゆったりしたペースのジョギング30秒 >8回繰り返す 無理のないペースでのクールダウン走1km

無理のないペースでウォームアップ走1km、ダッシュ600m、ゆったりしたペースのジョギング30秒 >6回繰り返す 無理のないペースでのクールダウン走1km

無理のないペースでウォームアップ走1km、ダッシュ800m、ゆったりしたペースのジョギング30秒 >5回繰り返す 無理のないペースでのクールダウン走1km

インターバルは、最も重要な場面で効果を発揮するトレーニングです。ゴールへ向かって見事なダッシュでフィニッシュ——そんな素晴らしい結果をもたらしてくれる、シンプルながら効果的なメソッドなのです。 

ビーミッシュは、実際このトレーニング法でレースでも結果を出しています。「いつも1kmのインターバルを行っているよ」と言う彼。 

ファルケンは、「本番と同じようなペースで、短くスピード感のあるセッションが気に入っている」と語ります。「自分の調子を確認できるし、レース当日のパフォーマンスも予測できるからね」