

全3回でお届けする新しい動画シリーズ「ウルトラランナーの心の中」では、3人のウルトラランナーの胸の内に迫り、ウルトラディスタンスという壮大な距離を、なぜ、そしてどうやって走ることができるのかを探りました。この3人のランナーには、体の限界を突き詰めたくなるような独特な何かがあるのでしょうか?それとも、誰もが「ウルトラ」になれるのでしょうか?
ウルトラランニングは、フルマラソンよりも長い距離を走ります。一度に走る距離は42.195km以上。ランニングの世界では、既にフルマラソンが相当な距離を走る、大変なレベルのものだと考えられていますが、それでも一部のランナーは、マラソンよりも長い距離を目指します。
全3回でお届けする新しい動画シリーズ「ウルトラランナーの心の中」では、人生の経路も経歴も、目指すものも異なる3人のウルトラランナーに話を聞いています。3人の中に、プロのアスリートは誰一人としていません。皆、いわゆる「普通の」生活を送りながら、信じられないほどの距離を走ることができる人たちです。
3人がウルトラランニングを始めたきっかけや、走り続ける原動力、どのようにしてランニングと仕事の両立させているのか、そしてやり遂げるためのヒントやコツを、動画で全て、ご紹介します。また、パネルディスカッションにはサイエンスライターとして活躍する神経科学者のベン・マルティノガさんが加わり、最新の研究結果を基に、ランナーに何が起こっているのかを科学的に説明します。
それでは動画に登場するメンバーを紹介します。動画はページの最後にあるリンクからご覧ください。
ジョンソン・デュプリさんは、米シアトルにあるアウトドア・レクリエーションサービス会社REIで働いています。自らを「おてんば娘」と呼び、これまでアイアンマンレースに5回出場。24時間マラソンも経験しました。障害物レースなどエンデュランススポーツのアスリート、ハイカー、犬を愛するアウトドア愛好家などの一面も持っています。
目標は、世界で最も過酷なウルトラマラソンとして知られるバッドウォーターを走ること。それだけでなく、世界的人気を誇るテレビ番組「サバイバー」への出演も目指すなど、とにかくチャレンジ精神が旺盛です。
「私は10年近く前にウルトラランニングを始めました。アイアンマンへの挑戦にも限界を感じていたので、1つの種目でより長い距離を走ることにしました」
「ウルトラレースを走ると、達成感と強さを感じられます。それ以上に、ウルトラは私を精神的にタフにしてくれるので好きです。ウルトラランニングを続けるために必要な集中力、規律、決断力は、人生のあらゆる分野で役立つスキルです」
タウンリーさんは母親業をしながら、米国森林局で原生自然地域・自然景勝河川の専門家としてフルタイムで働いています。アウトドアは欠かせないと話すタウンリーさん。仕事が休みの時や2人の子供の勉強を見ていない時は、長距離ランニングを楽しんでいます。
タウンリーさんは約7年前にトレイルランニングを始めましたが、その頃は特に長距離を走りたいと思っていませんでした。しかし2年前に、家族を失った悲しみを癒すため、またワーキングマザーとしてのストレスや個人的な問題に対処するため、ウルトラランニングを始めました。
「外に出て自分自身に挑戦できる、私の時間です。だからトレイルランニングを続けています。ランニングは人生についてたくさんのことが学べるのが良いですね。レースではなく、走るためにトレーニングするのも好きです」
「ひとりで走るのも、夫や愛犬と一緒に走るのも好きです。ゴールした後にビールのふたを開けてからひんやりとした川に少し体をつけたり、夫と湖に飛び込めたりするような長距離ランを計画・トレーニングするのが楽しいですね。それをできる体力があること、そして、道中で目にする景色がご褒美です」
父として、そして歯科医師として働くカレル・サベさんは、これまでに長距離ランで数々の素晴らしい記録を残してきました。最近は2020年のビッグドッグ・バックヤードウルトラで優勝を飾りました。また、1986年の開催以来15人しか完走していない、悪名高きバークレーマラソンで走り続けた最後のランナーになったこともあります。サベさんは現在、アパラチアントレイルとパシフィッククレスト・トレイルの最速記録も保持しています。
「私がランニングを始めたのは、時々ストレスを感じる歯科医としての仕事から解放されるためでした。すぐに長距離を走れることに気が付き、能力を活かして山で数日間過ごすようになりました。ハイキングよりもよりたくさんのものを見られるようになりました」
「ウルトラディスタンスを走ると、いつも私の人生に新鮮な風を吹き込んでくれるように感じます。仕事で忙しい月が続くと、トレーニングでストレスを解消しています。しかし、自分をリセットすることができて、人生の幸せに必要なことはそれほど多くないと気付かせてくれるのは、実際に参加するウルトラランニングの大会です」
「ウルトラディスタンスではいつも美しい景色の中を走ります。だから新しい風景を探しにも行けますね。また、ウルトラランニングは自分の強さを感じることができるうえ、パートナーや人間関係の大切さ、粘り強さ、そして人生のささやかなことに満足することの重要性など、人生の他のことに活かせる多くの教訓が得られます」
神経科学者のマルティノガさんは、サイエンスライター・作家としても活動しています。脳研究の最前線で10年以上にわたり、日々の暮らしの中で私たちの脳がどのように変化するかを研究してきました。マルティノガさん自身も熱心なランナーで、これまでにも多くの有名ブランドやメディアで、ランニングが私たちの脳に与える影響について語ってきました。マルティノガさんは動画で、3人のランナーが語る内容を科学的に解説・分析します。
「私にとってランニングは常に、走って鍛えるというよりも、頭の中を整理するためのものでした。仕事上の問題で行き詰まったり、少し落ち込んだりしている時は、たいてい外に出て走りに行くべき時です。そして、実際に効果があります。最近では、運動、特にランニングがメンタルヘルスに非常に有益であるという研究結果がたくさん出ています」
「マウスのケージに回し車を入れると、マウスは何時間も走り続けます。 そして、その脳の内部を見ると、さまざまな点で脳の機能が向上していることが分かります。新しいニューロンが成長し、新たな結合ができていることさえも分かります。数年前までは、人間の脳でこのようなことが可能だとは考えられていませんでした。人間は、生まれた時から持っているものにある程度縛られていると考えられていました。だからこそ、これらのメリットを高めることができるのか、そして、長距離ランでそれが可能なのかどうかを探りたいと思っています」