

トライアスロンでオリンピック金メダル獲得経験があり、今回の東京大会でオリンピック5度目の出場となるニコラ・スピリグ選手に話を聞きました。
幼少期からスポーツは親しんできたのですが、そんな中でトライアスロンに出会いました。もともと体を動かすことが好きだったし、オリンピックには幼い頃からあこがれていました。
もうじき5度目のオリンピックに参加します。クレイジーですよね。大会は毎回、少しずつ違っています。トライアスロンがオリンピックの正式競技に追加されたのは、2000年のシドニー大会からです。当時、私はジュニアでしたが、シドニー大会で3位になったスイス人選手のレベルにかなり近いところにいました。その時にオリンピックの夢が現実の目標に変わり、4年後のアテネ大会出場を目指すようになりました。そして夢を叶え、2004年のオリンピックでトライアスロン競技に初出場を果たしました。
スイス代表として競技に参加できるのは、本当に名誉なことです。もちろん、スポーツ大会の頂点であるオリンピックに出場するとなると、大きなプレッシャーや期待を感じるのは事実です。でも、それは大きな特権だと思いますし、すごくやる気が湧いています。スイスのために競技に出られることをとても誇りに思います。
大変でした。東京大会に向けて準備しなくてはいけないのに、突然すべてのプールが閉鎖されてしまったんです。開催が1年延期になったので少しは楽になりました。パンデミックを経験したことで、より柔軟な対応ができるようになったのは確かです。
プロのアスリートとして、スポーツのために一番犠牲にしなければならないことは何ですか?
スポーツは私の情熱です。それを仕事にできるのは、ありがたいことだと思っています。ただ、すべてをうまく回していくのは簡単ではありません。でも、夫や家族、そして周りの人たちが懸命に支えてくれたおかげで、3人の子供の母親として5度目のオリンピックに出場できることになりました。こんなことは夢にも思っていませんでした。私は犠牲にした以上のものをこのスポーツから得ていますし、学業や、家庭を築くという夢も実現できています。
1日に3回、かなり集中してトレーニングを行います。午前中にスイム、昼前に別のセッション、午後に3回目のトレーニングをします。その間にもやることは多く、スポンサーやメディア関係者とのミーティングもあります。でも、最初のトレーニングセッションの前には必ず子供たちに会い、トレーニング後には子供たちと遊び、6時頃から夕食を一緒に食べて、寝かしつけるようにしています。
ロンドン大会では表彰台に立ち、国歌を聞きました。誇りと安堵と感謝に満ちた、何とも言えない瞬間だったのを覚えています。7月27日にはたとえ国歌を聞くことがなくても、最高のパフォーマンスをしたいと思います。
もちろんあります。でも私は夢を生きていますし、自分のしていることに大きな喜びを感じています。オリンピックという野心的な目標を持つと、モチベーションはすごく高まります。自分の限界に毎日挑戦する良い動機にもなります。
どの大会も違います。初出場の2004年も、経験者として出場した2008年北京大会もそうです。2012年はどうしても金メダルが欲しかった。2016年には、第1子を連れてリオ大会に出場し、銀メダルを獲得しました。
アテネ大会では、オリンピック精神を初めて体験しました。他のスポーツイベントを訪れたり、レース後に他の選手と会ったりするのがすごく楽しかったですね。
どの大会も異なるので、常に新しい状況に慣れる必要があります。でも、オリンピックに出場することでプレッシャーや期待を受けてきたのは良い経験だと思います。対処法が分かりますから。こうした経験が確実に糧になっています。
子供たちをサポートするプログラムや財団を今、立ち上げています。また、2022年の春には「Sub8」プロジェクトに参加する予定です。このプロジェクトでアイアンマンを8時間未満で完走して、他の人たちに夢や目標を追うきっかけを提供したいと思っています。刺激的でやりがいのある仕事になることは間違いありません。
夢を追うよう人を勇気づけられたときは、心が揺さぶられます。子供たちと触れ合うのが大好きなんですが、子供たちには運動の大切さを伝えるよう心掛けています。2014年には子供向けのトライアスロンプログラムを設立しました。まだ内容を充実させているところです。財団を通じて学校の子供たちと触れ合う機会も作っています。
当初の予定では、家族や友人と一緒に東京へ行くことになっていました。もちろん、彼らがいないのは寂しいですね。彼らのサポートは心の支えですから。でも状況を変えることはできないので、この状況でできることを精一杯頑張ろうと思っています。
それも大会の一部だと思っています。注目を浴びることへの対処法も、集中力を失わないようにする方法も学んできました。なので、素晴らしい舞台で注目を楽しむ余裕もあります。でも、注目されなくなっても寂しく感じることはありませんね。