

アスリートたちは長年、トレーニング前の一杯のコーヒーを習慣としてきました。集中力や持久力アップに効果があるコーヒーですが、飲み過ぎるとセッションが台無しになってしまうので注意も必要です。


多くの人とって、一日のスタートに欠かせないのが一杯のコーヒー。でも、朝のワークアウト前に飲むのはどうなのでしょうか?
アスリートの多くが、コーヒーは気分を上げるための大事な習慣だと言います。Onのアンバサダーを務める栄養士のジェイド・ライリーさんもそのひとり。「私にとってコーヒーはモーニングコールみたいなもの。トレーニング前にカフェインを摂ると、ジムでのパフォーマンスに効くんですよ」と話します。一方、コーヒーはトレーニングを終えてからゆっくり楽しむという人もいます。
さて、どちらの方が「正しい摂り方」なのでしょう?運動前のコーヒーには大きなメリットがありますが、デメリットもいくつかあります。長所と短所を把握して、自分の身体とトレーニングルーティンに合った朝の一杯の取り入れ方を正しく判断しましょう。
多くのアスリートがワークアウト前にコーヒーを飲むことを支持しています。これはトレーニング効果を最大限に上げるためです。一方、ハイブリッドアスリートで『Eat Like a Legend』の著書もあるダン・チャーチルさんのように「一杯のコーヒー」をリカバリーの大切な一環にしている人もいます。
朝のコーヒーは眠気覚ましに効くだけではありません。さまざまな研究から、ワークアウト前にカフェインを摂取することで筋力、持久力、そして心拍出量が全体的に向上することが示されています。ハードな運動をしてもそれほどキツく感じず、気分に余裕が生まれるため、その分、いつもよりも運動量を増やせます。
さらに、カフェインは苦痛を緩和するため、最後のひと踏ん張りがきく効果があると指摘する研究もあります。ただし、このことを踏まえて、自分の身体の状態にしっかり気を配ることも重要。コーヒーで頑張る力をもらっても、限界を越えて無理しないように気を付けましょう。
コーヒーは即効的にパフォーマンスに効くだけでなく、持久力を高める効果もあります。そのため、マラソンランナーやトレイルランナーが長距離ランの前にコーヒーを飲んだり、走っている最中にカフェインジェルを補給するのはよくあることです。
カフェインは体内の脂肪の燃焼を促しつつ、グリコーゲンの消費を後々までセーブする働きがあるため、長距離ランを安定的にこなしたいときにぴったりです。マラソン大会に向けた準備期間中や、計画的なトレーニングプランを集中的にこなしているとき、あるいはトレイルで丸一日過ごすときなど、疲労感なく運動できる時間が延びるように感じるかもしれません。
肉体の燃料となってくれるコーヒーですが、精神への刺激剤にもなります。多くのアスリートにとって、ワークアウト前の一杯は、「寝ぼけまなこ」から「トレーニングモード」へ切り替えるスイッチ。
コーヒーを飲むことでしっかり目が覚め、疲れも軽減されるため、特に早い時間の朝練や、心身ともにしゃきっとしない朝に集中力を発揮するのに効果的です。しかもパフォーマンスの向上はもちろん、やる気もブーストされるため、ランナーズハイを求めて外へ飛び出す後押しにもなります。


元気をくれるコーヒーですが、体質などのさまざまな要因で合わない人もいます。カフェインは薬物の一種だということも忘れてはなりません。過剰に摂取すると不安やイライラに苛まれたり、リカバリーしたいのになかなか眠れないなどの問題が生じます。遅い時間に飲むことで睡眠の質も下がり、翌日のトレーニングにも響きます。
また、コーヒーで胃が荒れることもあるので、空腹のままワークアウトするときは特に注意しましょう。酸性で消化を助けるため、多くの人にとって朝にぴったりの飲み物である一方、人によってはトレーニング中に足がつったり胃が不快になることもあります。
「ワークアウト前にコーヒーを飲むべきか判断するには、まずシングルショットにたっぷりミルクを加えるラテなど、弱めのコーヒーで試してみて」とライリーさんはアドバイス。つまり、コーヒーを飲んで調子が良くなるアスリートもいれば、逆効果の人もいるのです。事前のカフェイン摂取をルーティンに取り入れるか迷っているなら、最初は少量から試してみましょう。
ではトレーニングの前にコーヒーを飲むべきなのでしょうか?まずは自分の心と体に訊ねてみましょう。飲んだときの体調や気分を慎重に観察しながら、自分に合ったタイミングや量を調整します。
研究によれば、ほとんどのアスリートは、体重1kgあたり3~6mgのカフェイン摂取でトレーニングへの効果を実感するとされています。体重が68kgなら、必要なカフェインの量は約200~400mg。つまりコーヒー2~4杯分です。
目安として、通常のコーヒー一杯には95mgのカフェインが含まれていると考えてください。ただし種類によって差があり、例えばエスプレッソなら64mg、インスタントコーヒーならカフェインの量はさらに少なめです。確実に一定量を摂取するためにカフェイン入りのジェルを利用するアスリートもいますが、飲む量をきちんと管理すれば普通のコーヒーでも同じように効果が期待できます。
米国のFDA(食品医薬品局)は、1日あたりのカフェイン摂取量を400mgまでにするよう推奨しています。それ以上の量を取るとメリットが薄れ、元気を得るどころか、そわそわして神経が高ぶってしまいます。
大切なのは毎回、全力を出し切るのではなく、気分よくトレーニングをこなし活力を高めることです。そのためにも、きちんと自分でコントロールするよう心がけましょう。
摂取のタイミングも重要です。ランニング前の食事に気を配るのと同じように、計算のうえでコーヒーをいつ飲むのかを決めましょう。トレーニング開始の30~60分前に飲んでおくと、ちょうどいい頃合いでカフェインの効き目が現れます。ライリーさんは、ハードなワークアウトの1時間前に飲むと言います。「おかげで不快感に襲われることなく、ワークアウト中にカフェインの効果を実感しています」
一日のどの時間に飲むかにも気をつけましょう。夕方以降に飲むと夜にその影響が現れます。カフェインの作用は数時間続くため、身体のリカバリーに必要な睡眠時間が削られてしまう場合もあります。
すべてのコーヒーが同一の効果を持っているわけではありません。淹れ方や濃さ、さらには何を加えるかによっても身体にどう影響するかは変わってきます。
ドリップコーヒーはカフェインがゆっくり体に行きわたります。一方、濃度が高く量の少ないエスプレッソはさっと飲めるため、より即効性があります。
また、最近アスリートの間で人気なのが水出しコーヒー。カフェインが多めで、酸味は少なく、特に暑い季節にうってつけです。
コーヒーに何を加えるかにも注意しましょう。砂糖は血糖値の急上昇を引き起こし、エネルギー切れをもたらす恐れがあり、牛乳やクリーム類は消化不良を引き起こすことがあります。そのため、アスリートの多くはブラックコーヒーかアメリカーノを好みます。シンプルで効果的、ワークアウト中に悪影響を及ぼす可能性も低いためです。


コーヒーはトレーニングへのエンジン始動を助けます。でも最も効果があるのは、決まりを作りそれを守り続けることです。トレーニング前の一杯の有無に関わらず、まずは自分の体に合った習慣を見つけるところから始めましょう。ライリーさんは朝のコーヒーを欠かさない派だと言います。「私の場合、コーヒーを飲まずにワークアウトすることはあまりないですね」
十分な栄養補給を心がけ、自分に合ったカフェインの取り方を見極めたら、長く続けられるルーティンを作っていきましょう。