スキップして進む

On App

スイス生まれの高機能ランニングシューズ&ウェア

瞬発力を​鍛える​プライオメトリクスの​すすめ

すばやく​動き、​ジャンプ力を​上げて​飛躍的に​パワーアップ。​それを​全部​実現できる​プライオメトリクストレーニングに​ついて、​フィットネストレーナーの​ロイ・チャンさんに​解説して​もらいました。

プライオメトリクスのエクササイズをしている女性。
プライオメトリクスのエクササイズをしている女性。

よりパワフルに速く、コントロールのきいた動きをするのに効果的なプライオメトリクストレーニング。 

フィットネストレーナーのロイ・チャンさんはこう言います。「足首で吸収した衝撃を力としてすばやく発揮する能力は非常に重要です。自分自身のトレーニングでも意識しますし、アスリートやそれ以外の人のコーチングにおいてもそれは同じです」 

軽い足運びでスピードもキレもある動き。コーディネーション能力の向上。そして怪我のリスクの軽減。 

そして最大の力を瞬時に出せる瞬発力こそが、何よりまずプライオメトリクスで鍛えられる能力です。マラソンの自己ベスト更新や、初めて5km走を目指す人はもちろん、テキパキと機敏に動きたいという目標であっても、プライオメトリクスを週に数回ドリルを取り入れるだけで効果が期待できます。

プライオメトリクストレーニングとは?​

プライオメトリクスは、体の筋肉をバネのように動かすためのトレーニングです。ジャンプ、バウンディング、ホップなどの高強度運動を思い切りやることで、体に対し瞬時に力を出し切る方法を覚えこませます。  

特に効果的なのは、すでにやっているトレーニングの中に短時間のプライオメトリクスを組み込むこと。例えば、トレイルランニングの前にスクワットジャンプをやって脚力を刺激したり、インターバルトレーニングの後で縄跳びをして、疲労で乳酸がたまった両脚のコーディネーションを整えたりします。 

効果を実感できるのはプロだけではありません。チャンさんも指摘するとおり、どんな人でもプライオメトリクストレーニングをすることで、力も回復力も高まり効率的に動けるようになるのです。 

プライオメトリクストレーニングの​仕組み

ジャンプという運動は、一見したところ1つの滑らかな動作ですが、実はミリ秒単位の猛スピードで3段階のサイクルが発生します。つまり筋肉が衝撃を吸収し、停止、それを勢いよく跳ね返すという3つの動きを経ているのです。 

  1. エキセントリック:パワーを溜める”ロード”の段階。蹴り出しの前に軽く膝を曲げかがむことで、筋肉を伸張してエネルギーを蓄え、次の動きに向けた態勢を作ります。 

  2. アモーティゼーション:一時停止する”ポーズ”の段階。このわずかな瞬間は体が安定します。この段階をすばやく通過すればするほど、次の放出段階でパワーが増します。  

  3. コンセントリック:パワーを放出する”リリース”の段階。筋肉が収縮し、蓄積されたエネルギーを一気に放出します。飛び跳ねたり、地面を蹴って走り出したりするのがこの段階です。  

以上のような仕組みを詳しく覚える必要はありませんが、”ロード”、”ポーズ”、”リリース”のリズムを理解してトレーニングに活かせば、レップをこなす時にもより多くのパワーを引き出せるようになるでしょう。  

縄跳びをしている男性。
縄跳びをしている男性。

瞬発力を​鍛える​プライオメトリクスの​すすめ

プライオメトリクスは、アスリートがここぞというときにパワー全開で思い通りに動けるようするためのトレーニングです。ランナーであればよりシャープな蹴り出しが、野球選手であればより力強いスイングが可能に。瞬発的なエネルギーの発揮がモノをいうスポーツならどれでも効果があります。  

そしてこのトレーニングはアスリートだけのものではありません。階段の昇り降りや、足を滑らした時の反射神経などの日常的な動作も、筋肉の反応が良くなればぐっとラクになります。速筋繊維を重視するプライオメトリクスは、すばやい加速や急な方向転換、長時間のスピードの維持などを可能にします。  

特にコントラストトレーニングが効果的だとチャンさんは語ります。「高重量の筋力トレーニングと、生体力学的にそれと類似した動きをするプライオメトリクストレーニングを組み合わせるのがこの方法です」 

例えば、チャンさんは重量をかけたスクワットに続いてジャンプスクワットを行うことで、活動後増強(PAP)と呼ばれる現象を利用してパワーと神経筋効率を高める方法をとっています。高重量筋トレを通じて準備が整った神経系が、爆発的な運動の瞬間にすばやく、より力強く作動できるようになるのです。 

プライオメトリクスは一時的な運動パフォーマンスのみならず、長期的な健康維持にも役立ちます。骨密度が加齢とともに低下していくのは自然の現象ですが、それとともに骨折リスクが高まり、特に女性はその傾向が顕著です。米国の専門機関、Bone Health and Osteoporosis Foundationによれば、50歳以上の女性の最大50%、男性は25%が骨粗鬆症のために骨折のリスクを抱えています。プライオメトリックスで骨を強くし、それを維持することで転倒や骨折、運動機能の低下の可能性を減らすことができます。 

運動生理学者のステイシー・シムズ博士は、10分間ジャンプするトレーニングを週3回やるだけでも効果があると指摘。健康と科学をテーマとしたポッドキャスト「Huberman Lab」では、「この種のトレーニングを4か月間続けることで、骨粗鬆症の人の骨密度が正常に戻りました」と報告しています。 

短時間でできるのも嬉しいところ。週に数回、短いセッションをこなすだけで、より速く、より強く、よりレジリエントな体になり、スポーツだけでなく日常生活でも違いが表れます。

メディシンボールを投げ合っている2人のアスリート。メディシンボールを投げ合っている2人のアスリート。

ワークアウトに​組み込む エクササイズの​種類

プライオメトリクスのエクササイズは大きく分けるとバイラテラル、ユニラテラル、エクステンシブ、インテンシブの4種類があります。   

いずれも体に大きな負担がかかるので、少しずつ始めるのがベストです。最初はコントロールに重点を置きながら低負荷のものに取り組み、徐々にレベルアップしていきます。プライオメトリクスでは「過ぎたるは及ばざるがごとし」と心得ましょう。週1~2回、短時間のセッションで、2~5回のレップを3~6セットやれば十分です。フォームを意識して崩さないよう気を付けながら行いましょう。  

チャンさんは、特に初心者の人にはポゴジャンプをすすめます。「プライオメトリクスのなかでも基本的なエクササイズのひとつで、パワーを増強し下半身の硬さを改善するのにきわめて効果的です」。これは「シンプルだけれど決して簡単ではない」ため、初心者から上級アスリートまで幅広い層に適しており、チャンさんは自身のプログラムに必ず組み込んでいます。

バイラテラル

両足を同時に使う運動です。バランスもコントロールもとりやすく、最初のエクササイズに適しています。 

:ボックスジャンプ、スクワットジャンプ、デプスジャンプ、ラテラルジャンプ。 

ユニラテラル

片足を使った運動で、バランスやコーディネーション、コントロールを鍛えます。ここではランニングに必要な条件が再現されるため、特にランナーにとって理想的なエクササイズで、筋力のアンバランスを修正するのに役立ちます。 

:片足ボックスジャンプ、ハードルホップ、片足バウディング。 

エクステンシブ

低強度の運動を高ボリュームでこなすことで持久力をつけ、リズムを養います。 

:スキップドリル、縄跳び。

インテンシブ

高強度の運動を低ボリュームで行い、すばやく力を出すための筋肉を鍛えます。基本的な筋力とスピードを身につけるのに最適です。

:スクワットジャンプ、ボックスジャンプ、デプスジャンプ。

ジャンピングジャックをする男性。ジャンピングジャックをする男性。
縄跳びをしている人。縄跳びをしている人。

プライオメトリクスの​ための​準備運動

高負荷のプライオメトリクストレーニングにはウォームアップが欠かせません。ゆっくりと筋肉をのばすスタティックストレッチではなく、血流を促し、関節を活性化させる動的な準備運動に重点を置きましょう。 

シンプルなものとしてはウォーキングランジ、レッグスウィング、ショルダーロールなど。数分間やるだけで神経系が整い、コントロールを効かせながら力強く意図的に動けるようになります。  

初心者やブランク後に運動を再開する人は、ゆっくりと徐々に始めてください。「プライオメトリクスは効果の高いエクササイズですが、慣れない人にはリスクもあります」とチャンさん。「足首周りの結合組織が強化され、プライオメトリクスが求めるストレスに適応できるようになるには時間がかかります。最初はゆっくり始めて意図的な動きをすることに集中し、徐々に負荷、量を増やしながら複雑なものに挑戦するといいでしょう」 

出発点としてチャンさんがすすめるのはジャンピングジャックや、スキップ、ポゴジャンプなどの低負荷の運動です。セッションは短かめに設定し、セットごとに十分な休息時間をとりましょう。量よりも質が大事ということを忘れずに。  

プライオメトリクストレーニングの前にストレッチをしている女性。
プライオメトリクストレーニングの前にストレッチをしている女性。

ウェアの​選び方​

適切なギアををろえることでプライオメトリクストレーニングを安全でスムーズに、そして効果的に行えるようになります。まずはシューズ。Cloudpulseのようにクッショニングがしっかりしていて、反発力がありながらグリップ力も抜群、そして幅広のトゥボックスで安定した接地感のあるものが理想です。シューズ以外はシンプルにまとめましょう。Train TightsTrain Tankなど、軽量で吸湿速乾性に優れたアイテムがおすすめです。

「シューズは、足の動きにぴったり添ってくれるものを選びます」とチャンさん。「最小限のクッショニングで地面との距離が近く、自然な感触があると体は想定通りに機能しやすいです。良いシューズならギプスのような違和感はなく、自分の足の一部のように感じるはずです」

プライオメトリクスに​便利な​道具

このトレーニングは道具を使わなくても行えますが、適切なツールを活用することで新しい動きを試したり、ワークアウトに変化を持たせることができます。次のようなものがあれば便利です。 

- アジリティラダー:クイックフィートドリルや、低負荷バウンディングでコーディネーションを鍛えられます。 

- マーカーコーン:ジャンプシークエンスや、多方向への瞬発力トレーニングに。  

- 縄跳び用ロープ:簡単に繰り返し続けられる運動で、リズム感やタイミング、心肺機能を鍛えます。  

- メディシンボール:ボール投げ、スラム、全身を回転する動きに負荷をプラス。 

- プライオボックス:ボックスジャンプ、デプスジャンプ、ステップダウンドリルに便利。 

- サポート力の高いトレーニングシューズ:衝撃を緩和し、体の安定を保ちます。  

- レジスタンスバンド:ラテラルバウンディングやスクワットに負荷を加えます。 

- トレーニング用マット:関節を保護し、固い床面への着地を和らげます。 

いつもの​トレーニングを​パワーアップ

毎週のトレーニングにプライオメトリクスを数回取り入れることで、スポーツに必要な筋力が鍛えられ、年齢を重ねても無理なく動ける体作りができます。まずは過度な負担のないところから始めましょう。週に1~2回の短いセッションでレップは少なめに、正しいフォームの維持を意識します。

誰かを誘って一緒にトレーニングするのも効果的です。励まし合いながら頑張って、ワークアウトを継続的な習慣にしていきましょう。