

朝起きたらすぐに走りに行くという人もいれば、まずは食事をしてから、という人もいます。何が「正しい」かは、その人の体の状態やワークアウトの強度、目標によっても異なります。あなた自身に合ったベストな朝食のとり方について、アドバイスをまとめました。


朝食は一日で最も大切な食事だとよく言われます。アスリートにとって朝ごはんはもちろん欠かせませんが、問題はいつ食べるかということ。トレーニングの前、それとも終えてから食事すべきなのでしょうか?
Onアンバサダーを務めるアスリートで栄養士のジェイド・ライリーさんは、いつも食事をしてからトレーニングしています。「栄養補助バーでもバナナでもベーグルでも、ワークアウトをする前に必ず何かを食べるようにしています」
どのタイミングが適切かは、その人の体の状態や目標、ワークアウトの種類によって異なってきます。軽めのモビリティセッションと、長距離ランや高負荷のサーキットトレーニングでは必要とされることは大きく違います。性別やトレーニングの強度、時間的長さといったさまざまな要因がすべて、肉体のパフォーマンスとリカバリーに大きく影響するのです。
自分の身体の状態をきちんと把握するとともに、トレーニングのニーズを理解することで、適切に栄養補給するための朝食のとり方が見えてくるはずです。
「朝起きるとすぐに、自分が燃料不足だったり、脱水状態や睡眠不足かどうかが分かります」と話すのは、ハイブリッドアスリート兼シェフで、『Eat Like a Legend』の著書もあるダン・チャーチルさん。
体は頭で考えるよりも先に、何が足りていないかを教えてくれるもの。目が覚めたときに体が重く、頭がフラフラして空腹なのに、食事をとらずに高強度のワークアウトをやろうとしても、たいていは症状が悪化するだけです。
ワークアウトの前に朝ごはんを食べることで体内にエネルギーが補給され、血糖値も安定、集中力と意欲も高まります。ライリーさんはこう指摘します。「運動に必要な栄養素が身体に安定的に供給されているときは、パフォーマンスが間違いなく向上します。その主役となるのが炭水化物ですね」
炭水化物を多くとることで筋肉に素早く燃料を供給でき、これに少量のタンパク質を加えれば筋肉の分解を防ぐほか、代謝が活発になり、その日の活動に備えられます。「セッションの前に栄養補給することで、その後の食べ過ぎも防げます」とライリーさん。「また、“ストレスホルモン”とも呼ばれるコルチゾール値を下げ、貯蔵されているエネルギーを体が効率的に利用できるようになります」
HIITや筋力トレーニング、長距離ランの場合、朝食を食べてからやれば違いは一目瞭然。ハードなトレーニングを長時間、集中して行えるようになります。アスリートは、しっかり栄養を摂ると、空腹のままトレーニングするよりも効率的にパフォーマンスを発揮できることが、調査でも一貫して証明されています。
めまいや低血糖、疲労感といった症状に陥りやすい人は、事前に食事をとることが特に重要です。また、女性は卵胞期と黄体期のホルモンサイクルがあることから、エネルギーレベルとリカバリーの両方に役立つワークアウト前の栄養補給がいっそう大事であることが、研究で示されています。


ランニングの前や朝のワークアウト前に何を食べるかで、パフォーマンスにも大きな違いが出ます。絶対に決まった「正しい」食事があるわけではありませんが、運動前にふさわしい食品があることも確か。消化の良い炭水化物を摂取してエネルギーをすばやく取り込み、加えて筋肉の回復をスムーズにする少量のタンパク質を組み合わせましょう。ただし、脂質や食物繊維は控えめに。消化に時間がかかり、不快感をもたらす可能性があります。
ワークアウト前は、シンプルにコーヒーとバナナだけでもエネルギーアップが可能です。「ピラティスをするときには、このコンビがぴったりですよね」とライリーさん。一方、長距離ランの燃料補給には「それよりずっと多くの炭水化物が必要です」
ライリーさんの定番は「蜂蜜を塗ったベーグルですね。消化の良い炭水化物は、過酷なトレーニングに向けたエネルギー補給にぴったりです」
ワークアウト前の朝食は、次のようなバランスのとれた組み合わせがおすすめです。
- ベリーを添えたオートミールとヨーグルト - バナナとピーナッツバター - マルチグレインのトーストと卵料理 - ピーナッツバターとジャムを塗ったトースト - プロテインパウダー入りのフルーツスムージー
また、食べるタイミングも注意が必要。ライリーさんは固形物を消化しきるために、最長90分前には食事を済ませてから走るようにしています。時間がない朝は、ワークアウトの30~45分前に軽い食事をとるといいでしょう。
ただし、一番大切なのは自分の体の声に耳を傾けること。何をいつ食べるかをうまく調整しながら、最大限力を発揮するためのワークアウト前のルーティンを確立しましょう。


アスリートの中には、朝ごはんの前にワークアウトした方が好調だという人もいます。“断食エクササイズ”とも呼ばれるこの方法は、すべての人に適しているわけではありませんが、血糖値の改善や代謝柔軟性の向上といった潜在的効果をもたらすこともあります。
とはいえ、断食エクササイズは一つの手段ではあるものの、成果をあげる手っ取り早い方法ではないということも忘れずに。空腹を抱えたままトレーニングをしても、それで自動的にパフォーマンスが向上したり、手軽に健康になれたりするわけではないのです。
ライリーさんは、どんなアスリートであっても断食トレーニングはなるべく避けるようアドバイスします。代わりにワークアウト前に炭水化物中心の軽食をとり、運動を終えたらバランスのとれた食事をして栄養を補給するのがベストだと言います。
それでもやはりトレーニング後に朝食をとりたい人は、セッションを短時間にとどめ(理想的には45分以内)、めまいや疲労を防ぐために十分に水を飲みましょう。そして運動後にきちんと栄養を摂ります。
トレーニングを終えてから何を食べるかで、その後一日の調子も左右されます。きちんとした食事で身体のリカバリーと筋肉の修復が促され、消費したエネルギーが補給されます。また、セッション前にすでに朝ごはんを食べた場合でも、トレーニング後は軽食をとると効果的。
ワークアウトの後は炭水化物とタンパク質に重点をおきましょう。タンパク質は筋肉の修復をサポートし、炭水化物はグリコーゲンの貯蔵を回復させます。トレーニングの強度が高ければ高いほど、必要なタンパク質の量も多くなりますが、軽めの運動なら炭水化物の比重を増やしてもいいでしょう。
ワークアウト後の朝食には、次のようなものがおすすめです。
- フルーツとグラノラ入りのギリシャヨーグルト - 卵料理、全粒粉トースト、フルーツ - プロテイン入りスムージーとバナナ - カッテージチーズと果物 - プロテイン入りパンケーキ - ピーナッツバターのサンドイッチ
空腹のままトレーニングをした場合は、運動の直後に栄養補給することが特に重要です。30分以内の食事を心がけましょう。そのタイミングなら体が栄養をどんどん吸収し、すばやくリカバリーモードに入ります。ワークアウト後の朝食を大事にすることで、消耗した体の栄養バランスが回復し、一日中エネルギーが持続するでしょう。




ワークアウトを朝食の前にするか、後にするかは結局のところ、体の状態やトレーニングのスタイル、目標といった個々人の条件によって違ってきます。
アスリートの栄養ニーズは人それぞれ。ただし、いくつかの基本的な原則もあるので、それを参考にして自分に最適のものを見つけましょう。男性は、テストステロン値が高くコルチゾール反応が低いため、多くの場合、断食トレーニングに良好に反応します。
一方、女性は通常、ワークアウト前に食事をとった方が効果的。月経サイクルに沿ったホルモンの変動で、空腹のままだとコルチゾールが増加し、エネルギー不足になる恐れがあるためです。
どのようなトレーニングを行うのかによっても条件は変わります。持久系アスリートは、有酸素運動の効率を高めるために、戦略的に断食トレーニングをすることがあります。しかし、筋力やパワーを要するアスリートは、一般にワークアウト前の栄養補給がパフォーマンスの向上につながります。「高負荷のワークアウトを行うときは、必ず何かお腹に入れておきましょう」とライリーさんは言います。
究極的には、自分の感覚を信じましょう。食後の方が動きにキレが出る人もいれば、空腹のほうが調子がいいという人もいます。自分にとって何が一番かは、いろいろ試しながら見つけていくといいでしょう。力が湧いてエネルギッシュに動ける。そんな状態が、あなたの体にとってベストなルーティンなのです。
朝のワークアウトには努力がいりますが、そこを頑張れば、その日は集中力もエネルギーも安定的に維持できます。仕事や家族の用事など、多忙なスケジュールに追われる多くの人にとって、朝のトレーニングは完全に自分のためにある貴重なひと時。これを習慣にすることでパフォーマンス目標に近づけるだけでなく、その日一日を調子良く過ごせます。
朝食とワークアウトの順序を決めるのも、このようなバランス探しの一環です。体に力がみなぎり、長く習慣にできるのが、あなたにとっての「正しい」アプローチです。
そして、朝のワークアウトでもう一つ元気の源となるのがトレーニングアパレルです。自然に、そして思い通りに動ける適切なアイテムを選びましょう。体に寄り添ってくれるトレーニングギアがあれば動きにしっかり集中できます。あなたのルーティンに合ったものを揃えて、朝の時間を最大限に活かしましょう。