

多くのアスリートにとってサウナは大切な習慣であると同時に効果的なリカバリー法です。熱を身体に取り込むとパフォーマンスアップにどうつながるのか、じっくり解説しましょう。


きついワークアウトを乗り切った後、アイスバスに直行する人もいれば、逆に温熱を求める人もいます。多くのアスリートがトレーニングの後や、マラソン後のリカバリーにサウナを利用していますが、どの様な人におすすめなのでしょうか。
「トレーニングを終えてサウナに足を踏み入れた途端、身体に“スローダウンしていいんだ”というメッセージが送られている感じですね」と語るのは、Onアンバサダーでフィットネスコーチのフロレンシア・グアルコさん。「筋肉の緊張が解けて呼吸が深くなり、気持ちがとても落ち着きます。体と神経のリセットボタンを押すような感じで、激しいワークアウトの後にこうしてリラックスすることで、ちょうどよいバランスが取れるんです」
北欧の伝統であり、同地域で人気の持久系スポーツとも相性のいいサウナは、リカバリーの場として、そして人と人とのつながりを培うスペースとして発達してきました。その効能は科学的にも裏付けられています。定期的なサウナの利用で心血管、肺機能、免疫力が向上するほか、高血圧や脳卒中のリスクも下がり、インフルエンザにも罹りにくくなります。
もちろん、リカバリーはバランスよく行わなければなりません。サウナは強力なツールになりえますが、まずは正しい利用法を知っておく必要があります。
ワークアウト後のサウナは単に気持ちがいいだけでなく、温熱効果で血管が拡張し血行がよくなり、より多くの酸素と栄養素が筋肉に行きわたります。また、血流量が増えれば乳酸やその他の老廃物が洗い流され、筋肉痛の緩和や、こわばった筋肉をやわらげる効果もあります。
グアルコさんは、定期的にサウナを利用すると筋肉の回復が早まり、夜もぐっすり眠れて体が軽く感じられると言います。「サウナに入っていると、まるで毒素が体から抜けていくような気がしますね」
スピーディで効果的にリカバリーできれば、持続的なトレーニング計画にとっても大きなメリットになります。
リカバリーは肉体だけでなく、心にとっても必要です。ハードなワークアウトや、慌ただしい一日の終わりにサウナに入れば、気持ちをスローダウンしてリセットできます。多くの人にとってこれは一種の儀式のようなもの。ゆっくりと息を整えて一日を振り返り、心の負担を軽くする静かなひと時なのです。
「サウナは私にとって落ち着くための時間です」とグアルコさん。「自分の呼吸に集中して熱に身をまかせ、光を落とし静まり返ったあの空間を満喫することで神経のバランスが整ってきます。トレーニングの後、内省しながらその一日に感謝するのが、ささやかな習慣になっていますね」サウナの熱は筋肉の緊張をほぐし、全身の神経を“戦いモード”から解放してくれます。
また、自然な満足感をもたらすホルモン、エンドルフィンの分泌を促すので、心が落ち着いて安らぎます。「メンタルがクリアになるのも、サウナのいいところです」と指摘するグアルコさん。「出る頃には気持ちがすっきりしてバランスが整い、次の挑戦に向けて頑張ろうという気分になっています」
定期的なサウナの利用はワークアウト後のリカバリーに効くだけではありません。心臓の健康を長期にわたってサポートする効果もあります。研究の結果、サウナを習慣にすることで血圧低下、炎症の抑制、血管の改善が期待でき、さらには心臓病、心臓発作、脳卒中のリスクも下げると示されています。
サウナの熱気で血管が広がり、血行が促されることで循環器系を活性化。適度な運動をしたときと似たような状態になります。


サウナにはさまざまなメリットがありますが、すべての人に同じ効き目が現れるわけではありません。アイスバスもそうですが、サウナにも限界とリスクがあります。
自分に合わない場合や、リカバリーを遅らせる場合もあるので、きちんと理解しておきましょう。いつでも安全かつ効果的に利用することが大事です。
サウナでは汗をたくさんかきます。高強度のワークアウトで水分がすでに不足しているところへ、さらに大量に汗をかけば脱水症状になるリスクが高まります。結果、めまいや頭痛、さらに深刻な熱疲労を招く恐れもあります。
これを予防するには、サウナの前後に水や電解質入りのドリンクを飲んでおくこと。アルコールとカフェインは利尿作用があり、脱水症状を悪化させるのでおすすめできません。特にアルコールは、低血圧や不整脈のリスクを高めるので、飲むのは控えましょう。
最初はまず短時間で試してみましょう。1回のサウナは10~20分間が安全といわれますが、初心者は、体が慣れるまでは10分程度にとどめます。
一般に、ほとんどの人にとって安全なサウナですが、心臓に問題がある人は注意が必要です。低血圧や心臓疾患の既往歴のある人は、サウナを利用する前に必ず医師に相談してください。サウナの熱は自然に血圧を下げる効果があるため、特定の症状が悪化する恐れがあります。
サウナに体の限界を超えて長時間入っていると熱疲労を招いたり、熱射病になったりすることがあります。経験の浅い人は特に注意が必要です。1回10~20分が目安ですが、自分自身の体の感じ方を無視してはいけません。入ってほんの数分であっても暑さを不快に感じるようなら、外に出てクールダウンしましょう。
ウェアも大切です。通気性の高いコットンやリネン素材を使い、ゆったりしたフィット感に仕上げたアイテムなら熱がこもりません。また、吸湿速乾性に優れたOn Train Shortsなら快適な着心地が続きます。ナイロンやスパンデックスなどの合成繊維は熱を閉じ込めるので避けましょう。肌をしっかり熱にさらしたい人は水着か、またはStudio Braとショートパンツが適しています。
サウナはくつろぎの空間です。とはいえ、共有スペースでもあるため、細菌や真菌(水虫など)の生息を招いてしまいがち。自分自身にとっても、他の利用者にとっても、良好な衛生状態を保つことが重要です。
サウナの前後にはシャワーを浴び、ベンチには直接腰を下ろさずにタオルを敷いて座りましょう。また、ビーチサンダルなどを履いて利用するといいでしょう。


サウナにもいろいろな種類があります。スチームなどの湿式、ドライな乾式、遠赤外線と、熱源の違いによって体の感じ方も潜在的な利点も微妙に異なります。自分のトレーニングの目的や好みに応じて1つのスタイルに絞ってもいいし、いくつかを組み合わせてもいいでしょう。
スチームサウナ:高温多湿(38~49℃程度)なため、まるで温泉にいるよう。湿気が肌に潤いを与え、鼻詰まりも軽減。ほどよい温かさを感じます。
ドライサウナ:伝統的なスタイルです。熱したサウナストーンや電熱ヒーターを使い、室温を71~93℃程度まで引き上げます。高温で乾燥した空気は循環器系の健康と血流を促しますが、人によって強すぎると感じることもあります。
遠赤外線サウナ:遠赤外線サウナは、空気を温めるのではなく、49~66℃の熱で体を直接温めます。温度を低めに設定すれば長時間利用でき、深筋層に作用して血行を促進します。近年人気が高まっていますが、ドライサウナやスチームサウナほど普及していません。
サウナは習慣にすることで、リカバリーだけでなく心を整える場にもなります。グアルコさんはこう断言します。「リカバリーは決して贅沢なことではなく、トレーニングの一部です。じっくり休んで回復すれば、パフォーマンスも向上しますし動きもよくなり、継続的に成果が出せるようになります」
サウナは呼吸法や瞑想のように、スローダウンして頭をすっきりさせ、身体をリセットするチャンスでもあります。
「最初は試してみるだけでしたが、すぐに譲れない習慣になりましたね」とグアルコさん。「何度かサウナに入るうちに、とても心穏やかになれてリフレッシュできると実感したんです。肉体的なリカバリーだけでなく、全身を充電する時間になっています」
友人やトレーニングパートナーとのサウナは、リラックスしながらコミュニケーションを取れる交流スペースになります。ウェアを選ぶならワークアウト後のレイヤーにぴったりな、やわらかな肌触りのセーターやルーズなコットンTシャツなどがおすすめ。心も体も元気になれます。
サウナを習慣にするには、徐々に体を慣らしていく必要があります。初マラソンの準備、日々のコンディションを整えるためなど、大きなトレーニング目標をサポートしてくれる心強い味方としてサウナタイムを利用していきましょう。