一人でも効果的にテニスの練習をするには――プロが教える10のコツ
練習相手がいなくてもテニスのスキルアップは可能です。一人で効果的にトレーニングするための10の方法をプロ選手に聞きました。
「踊るなら、誰も見ていないかのように思いっきり踊れ」という名言がありますが、これはテニスにも当てはまるでしょうか?確かにプレーでは全身全霊での集中を求められます。冷静さを失わずに体を動かしながら、身体の隅々まで意識を巡らせる。だからこそ一人練習は、技術の向上や持久力のアップ、メンタル強化に有効です。相手がいない分プレッシャーもなく、観客席の喧噪に気を取られることもありません。淡々とスキルアップに集中できるのがソロ練習のメリットです。
ドイツのテニス選手ユリア・シュトゥセクは、自分ひとりでのセッションをトレーニングに組み込んでいます。「テクニックや苦手なことに重点的に取り組むチャンス」だと彼女は説明します。そしてその後、パートナーとの練習試合で改善した点を実際に試すといいます。単独トレーニングをやる気が出ない日は、自分の目標を思い出すようにしていると語ります。「練習に励めば上達するという、確信に似た思いがあるんです。絶対に上手くなれるんだって。夢を叶えるためなら全力で打ち込みたいですから」
練習相手がいなくてもテニスで求められる様々なスキルを磨き、自信を持ってコートに立てるようになるための、プロも認める10の方法を紹介します。
1. フォアハンドとバックハンドの練習
フォアハンドとバックハンドの練習では、単に繰り返すのではなく自分の動きの中にリズムと流れを見つけることが大事です。コートでの優雅なプレーで知られるロジャー・フェデラーは、バックハンドを芸術の域にまで高めました。彼ほどのレベルを目指すのは至難の業かもしれませんが、自信を持って安定したストロークを打つという目標なら手が届くはず。
このようなスキルを磨き、マッスルメモリーを鍛えるのにうってつけなのが球出し機です。これなら自動的に球出しをしてくれるのでフットワークやフォロースルー、ハンドアイコーディネーションなど、細かな動作に意識を集中できます。モロッコ出身の若きスター、レダ・ベナニも球出し機をトレーニングに活用しており、的を絞った練習に効果があると勧めます。「フォアハンドとバックハンドを鍛え、パワフルなサーブを習得するのにぴったりですね。何度も何度も繰り返すのが大事です」
2. サーブの練習
サーブはポイントを取るためのスタートというだけでなく、パワーと精度、冷静さがまとめて試される瞬間でもあります。強力なサーブはゲームの基調を決めますが、これをパーフェクトに実行するのは並大抵のことではありません。一貫した良いサーブを打てるようになるには技術を磨き、どんな時も集中力を維持できなくてはなりません。そしてここぞという時に冷静沈着でいられる能力も必要です。一人練習は、このようなスキルを磨く絶好のチャンス。ラインの外側から確実に攻めのサーブを打ち込む実力をつけましょう。
サーブの腕を上げるには、マーカーコーンやホッパーをターゲットにしたドリル練習がおすすめです。サービスボックスに目印となるマーカーコーンを置き決まったエリアを狙うことで、常に思い通りの位置に打ち込む練習をしましょう。また、自分で次々に球出しができるホッパー(ボールかご)を使えば、中断せずにリズムとテクニックを練習できます。
シュトゥセクは一人でサーブ練習するのは重要だと語ります。「一人だからこそ自分がやっていることをじっくり考えられます。ショットを改善するのにぴったりな練習法です」。一人でトレーニングすることで体力の増強やコントロールの改善、マッスルメモリーの強化など、自信を持ってサーブするのに必要なスキルに集中して取り組むことができます。これに上半身の筋トレを加えれば、ショットのスピードアップと精度の向上も狙えます。
3. 壁打ちでボレー練習
フェンスに囲まれたコートを利用できなくても、壁があればボレーやサーブ、ストロークの練習ができます。「壁打ちは誰でもやりやすいうえ、ショットやテクニックを本当に改善できるんですよ」と話すのは、フラビオ・コボッリの理学療法士であるアルベルト・カンマラータ。壁にぶつけたボールの規則的なリバウンドを利用することで、試合の時のリズムやペースをシミュレートし、正確さやタイミングに関するスキルを磨けます。
サーブを練習する時は壁にターゲットとなる印をつけ、実際にサービスボックスに打ち込む時のような距離を取って立ち、そこからボールを打ちます。ボレーの練習は壁面に近寄り、コンパクトなストロークでボールを落とさないようにしながら、コントロールに注意して素早く打ちます。ベナニは最初の頃のトレーニングの日々を振り返り、壁打ちはバックハンドとフォアハンドを練習しながら同時にフットワークを鍛え、精度を高めるのに効果的だったと言います。「強く打ってはいけません。この練習を通して自分のペースを見つけるんです」と語ります。
4. フットワークの練習
フットワークはハイレベルなゲームの土台であり、あらゆるショットを効果的に打つ体勢の基礎となるものです。「どんなセッションもウォームアップから始めて、個別のドリル練習に移りますが、その日の重点に合わせたフットワーク練習もこれに含めるといいでしょう」と、カンマラータはアドバイスします。
まずトライしたいのがラダードリル。地面にロープやテープで「ラダー(はしご)」を描き、それを使ってアジリティ(敏捷性)を鍛えるトレーニングです。このフットワークのドリルをすることで足を動かすスピードやコーディネーション、身体コントロールが向上します。ここでは、ラダーのマスの間をいろいろなパターンで機敏に動くことでバランス感覚を鍛え、実際にコートでプレーする時の反応スピードを高めることを目指します。「実力を伸ばすには、テクニックとフットワークを融合することがとても大事」だと、シュトゥセクも話します。
ラダードリルは次のようにいくつかの種類があるので、ぜひ試してみましょう。
-クイックステップ:ラダーのマスからマスへと軽快な早足で移動し、フットスピードとコーディネーションを高めます。つま先立ちの状態でバランスの取れた低姿勢をキープしながらステップを踏んでください。
-クロスオーバー:足を交互にクロスさせながら、ラダーのマスからマスへと横向きに移動します。コートで機敏に左右方向に動くためのラテラルな敏捷性を鍛えるドリルです。
-イン&アウト:軽くジャンプしながら片足をマスにステップインし、次にマスに外にステップアウト。この動きを左右交互に繰り返します。このドリルはバランス、コーディネーション、素早い足の位置取りを鍛えるのに効果的です。
-ハイニー:膝を曲げ大腿四頭筋が地面と平行になる高さまで脚を上げる動きをしながらラダーを移動することで瞬発力とコーディネーションを鍛えます。
アジリティとコントロール力を高めれば、試合でもハイスピードのラリーや予測不可能なショットに自由自在に対応できるようになります。
5. 素振りでフォームを磨く
素振りはボールもコートも使わずにフォームやフットワーク、身体力学をブラッシュアップできる便利なテクニックです。フォアハンド、バックハンド、ボレー、サーブ。素振りなら、どんなストロークも各動作だけに集中しながらリズムをつかむことができます。素振りは室内の大きな鏡のある場所で自分のフォームをあらゆる角度から観察して、細かな調整を加えながら行うと効果的です。シュトゥセクは子供の頃、壁を相手に何時間もボレーの練習をしたと語ります。「ボールが必ず跳ね返ってくるので、それがいいんですよね。ミスすることもないわけですから」
素振りでも同じようなことが言えます。この場合、ボールを使わないのでミスの恐れは皆無です。プロ選手だった母を持つシュトゥセクはこう冗談を飛ばします。「お母さんに教えてもらうチャンスがなければ、代わりに壁を先生にすればいいんです」。素振りなら指導者の目を気にする必要もないため、失敗を恐れずにいくらでも練習できます。このように意識的に反復練習を続ければ、次第にラケットが自分の体の一部のようになります。そうすれば、コートの上で肉体と精神が一致した理想的なプレーができるようになるでしょう。
6. 適切なトレーニングギアを揃える
トレーニング用のギアはルックスだけでなく、気持ちが上がるかも重視したいところ。着心地や履き心地の良いものを身にまとえば、プレーも長く楽しめます。正しいトレーニングギアに投資することで、快適にパフォーマンスを向上できるだけでなく、怪我のリスクも最小限に。高品質のテニスシューズなら足をしっかりサポートしてくれるので、足首の捻挫やシンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)になる可能性を抑えられます。
有酸素運動のトレーニングにOnのCloudsurferを愛用するシュトゥセクは、「足裏部分が枕のように柔らか」な履き心地だと絶賛します。そしてコートでの定番はTHE ROGER Pro 2。これに、激しいトレーニング中もフレキシブルで快適なCourt Crop TopとCourt Skirt Side Pleatを組み合わせています。
また、シューズやウェア以外にも、トレーニングに役立つ各種器具もプレーのレベルアップをサポートします。例えばリバウンドネットや、サーブ、ボレーをシミュレートできるマシンを活用すれば、リアクションのスピードや一貫性、さまざまなスキルを自分一人でも改善できます。実際の試合状況を再現するこれらの器具は、パートナーやフルサイズのコートがなくてもフォームやテクニックを重点的に練習できる便利な手段なのです。
7. 小技で差をつける
テニスの上達には必ずしも直結はしませんが、慣れた手つきでボールやラケットを扱うことで経験度をアピールできます。仲間からも感心してもらえて、ライバルに対しては軽い心理的プレッシャーになるでしょう。ラケットでポンポンとボールを弾ませるラケットドリブルのようなスキルは、ハンドアイコーディネーションを強化しながら、コート上で余裕と自信を見せつけるジェスチャーにもなります。
また、手を使わずにラケットだけでボールを拾い上げる動作も、プレーヤーとしての洗練を感じさせるもの。一見ただの手遊びのように見えるトリックですが、熟練と自信のほどを対戦相手にさりげなく見せる効果があります。テニスがフィジカルなゲームであると同時にメンタルなゲームであることを忘れてはなりません。
8. メンタルの鍛え方
テニスプレーヤーとして強いメンタルを手に入れるには、他にどのような方法があるでしょうか。ひとつは頭の中で自分のゲームを視覚化するビジュアライゼーション。コートに立つ前に試合展開を想像するという効果的な手法です。「あらゆるコーチがビジュアライゼーションを重視しています」と話すのはカンマラータ。そしてフォーカスすべきはプレーヤー自身であり、対戦相手ではないと言います。そうすることで改善すべき点を特定し、自分の状況を把握したうえで、心と体がうまく調和した状態で試合に挑めます。また、ベナニを始めとする多くのプレーヤーたちにとって、録画した試合をコーチと一緒に分析するのもメンタル強化に大いに役立っています。自分の長所も短所も明らかできるためです。
一方、シュトゥセクは毎週、スポーツ心理学者のアドバイスを採り入れながら、試合本番のパフォーマンス強化を目指しています。「コートにいる時以外はできるだけリラックスして、試合のことをあまり考えないようにしています。ウォームアップにサッカーをするなど、何か楽しめることをしながら準備を整えていますね」と彼女は言います。ビジュアライゼーション、試合の分析、競技前のリラクゼーションのいずれであれ、メンタルを鍛えることでプレッシャーがかかっても落ち着いてゲームに集中する力が付きます。
9. 持久力をつける
テニス選手にとって持久力は極めて重要です。とりわけ次々に試合に出なければならないトーナメントのシーズンには結果を左右する要素となります。一人でスタミナアップを図るなら、定常状態のランニング、サイクリング、水泳など、ゾーン2の有酸素トレーニングがおすすめ。心拍数が自己最大値の60~70%に収まるペースでやれば、体に過度の負担をかけることなく長時間運動を続けられます。つまり、人と会話を楽しみながら適度な負荷も感じるくらいの、軽め~中程度の運動強度を保ってください。
持久力の基礎固めには、オフシーズンの間にカーディオ、ストレングス、アジリティそれぞれのトレーニングをバランス良くやることだと、ベナニは指摘します。「オフシーズンの最初の週は完全にカーディオのみに集中します。その後はカーディオを5割に減らし、残り3割をジムトレーニング、2割をリカバリーとコンディショニングに充てます」と説明。このように段階を踏むことで有酸素運動の土台を作ることができるのです。そしてトーナメントが近づいたら疲労回復とアジリティの維持に焦点を移します。「100%のコンディションで試合に臨む」にはリカバリーが極めて重要だ、とベナニ。オフシーズンにゾーン2のトレーニングを優先して行うことで、連日のように試合が続く次シーズンに向けて必要なスタミナをつけることができるのです。
10. ゲーム感覚を採り入れる
究極の目的は自分自身の限界を広げること。だから楽しんで続けられるように工夫しましょう。一人練習でもゲーム感覚でやればエキサイティングで集中力もアップします。架空の相手と対戦するふりをしたり、自分の中で目標を設定したりして自らに戦いを挑みましょう。
例えばターゲットとなるゾーンを決めて、そこにいくつボールを打ち込んだかを記録し、セッションを重ねながら目標値を上げます。壁に向かってミスなしで何回連続でボレーできるか数えながら打てば一貫性も持久力もアップします。あるいは、コート内のターゲットに連続ヒット目標を立てて、自分にプレッシャーをかけながら精度を上げます。このように、練習にゲーム的要素を採り入れることでモチベーションが上がり、実際の競技に無理なく応用できるさまざまなスキルを身につけられます。
テニスの練習を一人でこなすには集中力と熱意が欠かせませんが、上記のようなエクササイズを行えば、メンタル的にも肉体的にもスキルに磨きをかけてコートに立てるようになります。また、基本的なテニスギアは成功のための必需品です。THE ROGERコレクションのようなマストアイテムで快適にベストのパフォーマンスへとつなげましょう。トレーニングについてのさらなるアドバイスは、テニスのワークアウトをまとめたOnの完全ガイドをぜひご覧ください。プレーの場所を問わず、トレーニングをレベルアップする様々なヒントやドリルを紹介しています。
よくある質問
一人でのトレーニングでも、特定のスキルを磨く場合でも、ここに挙げた「よくある質問」をぜひ参考にしてください。テニスの一人練習を最大限に活かすヒントを専門的にアドバイスしています。
一人でテニスを練習するのはどのようなメリットがありますか?
一人で練習する一番の利点はフレキシビリティー。パートナーに頼ることなく、自分の都合に合わせてトレーニングできます。フットワークやボールのコントロール、ストロークの技術など、試合中は必ずしも注意が向かないスキルを磨きつつ、体を鍛えるのにうってつけです。
これらの基礎練習に時間を割くことで一貫性と精度が高まり、自信もついて、競技能力を全体的に強化できます。また一人練習では、具体的な目標に合わせてトレーニングセッションを自分で組み立て、試合に勝つために必要な集中力を養うことができるので、自己規律も身につきます。
球出し機を使った練習で効果を上げるには?
テニスの球出し機を効果的に使うには、まず明確な目標を立て、フォームに集中しましょう。そして一貫性を確立するために、まずは遅めのスピードから始めます。上達するに従って、実際の試合展開をシミュレートするようにマシンのスピードやスピン、方向を調整してボレーやグラウンドストロークなどさまざまなショットを練習します。また、フットワーク、ポジショニング、リアクションタイムを強化するには、コート内の特定エリアを狙うようにマシンを配置し繰り返しショットを練習してください。このような体系的アプローチを取ることで多角的なトレーニングとなり、改善したい点を重点的に練習できます。
テニスのスキルの中で最も習得しにくいものは?
多くの場合、サーブが一番難しいといわれます。サーブは完全に自分主導で打ちますが、精密なテクニックとパワー、タイミング、コントロールが要求されます。相手からのボールを打ち返すストロークとは異なり、サーブはトスに始まり、体の回転、手首のスナップに至るまで、あらゆる面を調和させて一貫性、スピード、正確さが揃わなくてはなりません。またプレーヤー自身が完全にコントロールできる唯一のショットでありながら、プレッシャーの中で完璧を期すのは難しいことから、高度の精神的集中も求められます。
テニス向けに体を鍛える最短の方法は?
フィットネスに近道はありません。少しずつ着実な積み重ねが必要です。高強度インターバルトレーニング(HIIT)とアジリティのドリル、そしてターゲットを絞ったストレングスの訓練を組み合わせましょう。例えばスプリントインターバルのようなHIITトレーニングなら、試合中の爆発的なエネルギー使いを再現できます。一方、ラテラルドリル(ラダードリルやコーンシャッフルなど)は、フットワークや素早いピボットを鍛えます。
脚、体幹、肩の強化にはランジ、スクワット、メディシンボールを使ったツイストが効果的。柔軟性を高めて怪我を予防するには、ダイナミックストレッチやモビリティワークも追加するといいでしょう。これらを取り入れたルーティンを継続すれば、試合に出て機敏に動ける体を最も効率的に手に入れることができるはずです。
一人でテニスの練習をするのに必要なものは?
一人でも効果的に練習し、集中力を持続させるには、いくつかの基本的な器具が必要です。まず以下のものを用意することから始めましょう。
-ラケット
-ボール(複数)
-コート
-壁打ちができる壁
-マーカーコーン
-ホッパー(ボールかご)
-テニス用球出し機
-ビデオカメラと三脚