

テニスは得点方式もとても独特。ラブやデュースなどの用語とともに、ゲームの基本を解説します。
テニスのスコアの数え方は、慣れるまでは延々と解けることのないパズルのように思えるかもしれません。1、2、3と順番に数えていく方が合理的なのに、なぜ15、30、40と進める?「デュース」や「ラブ」などの用語は一体どういう意味?実際、試合はどうやったら終わるの?単純明快に得点をカウントするスポーツとは異なり、テニスには独特のルールがあるのです。
でもいったん覚えてしまえばスコアリングは簡単。そして、このシステムならではの面白さも、それを利用した戦略も理解できるようになります。次のグランドスラムを観戦するもよし、地元の試合に参加するもよし。このガイドを読めば、テニスゲームの基本がわかります。
テニスのスコアはピラミッドのように各段階の積み重ねで成り立っています。ポイントを重ねてゲームを取り、ゲームを重ねてセットを取り、セットを重ねることでマッチ、つまり試合に勝つ。しかし、マッチを制し勝利を手にするまでには多くの要素や特別な条件が待ち受けています。細かいルールを見ていきましょう。
テニスマッチでは、まずコイントスでどちらの選手が最初にサーブするかを決めます。トスで決定するのはサーブ権と、どちら側のテニスコートから始めるかの選択権の2つ。勝った方がどちらかを選び、残りの方を相手が決めます。試合が始まったら、サーブ権は1ゲームごとに入れ替わります。
タイブレークになるとサーブ権がポイントごとに交代し、試合の流れを大きく左右します。はじめの選手(A)が1ポイント目をサーブしたらサーブ権がもう片方の選手(B)に移り、以降は2ポイントごとにサーブ権が交代します。つまり、選手Bが2番目、3番目のポイントをサーブしたら、4番目と5番目のポイントは選手Aがサーブする、という具合です。公正を期すために、最初のサーブは前のセットでサーブしなかった選手から始まります。
テニスは多くのスポーツとは異なり、ポイントは1点ずつではなく次のように加算していきます。
-15(フィフティーン)1ポイント目
- 30 (サーティー)2ポイント目
- 40 (フォーティー)3ポイント目
-4ポイント目を取るとゲーム獲得ですが、40-40のタイなら「デュース」になります。
デュースになると、どちらかが2ポイント連続で得点しなければゲームは終わりません。1ポイントを先取した方が「アドバンテージ」となり、もう1ポイント獲得すればゲームを取ります。しかし次のポイントを落とせば、スコアは再び同点に戻ります。
テニスの得点をなぜ15、30、40と数えるようになったのか、その歴史的起源ははっきりと分かっていません。でも最も有力なのは、時計に見立てたという説。ポイントが入る度に時計の針を15分刻みに動かし、15、30、45、60と一周させたというものです。しかし時が経つにつれて45の代わりに、より発音がしやすく他のスコアとも区別しやすい40に変更されたといいます。
セットはゲームの積み重ねで、セットを取るには通常6ゲームを先取しなくてはなりません。しかしこれには条件があって、少なくとも2ゲーム差をつけて勝つ必要があります。たとえば、6-4や7-5というセットスコアはありますが、6-5はありません。両者ともに6ゲーム取った場合は、タイブレークで勝者を決めます。
そして、セット終了時だけでなく、それぞれのセット内でも奇数ゲームが終わるたびにコートチェンジを行います。このようにコートサイドを変えることで、風向きや日差し、照明などの外的要因でどちらかが有利にならないようにして公平さを維持します。
マッチはセットの積み重ねです。一定数のセットを先取するとマッチの勝者となりますが、セット数は大会によって異なります。
-通常のトーナメントなど大半は3セットマッチで行われ、2セットを先取した方がマッチを制しますが、
-グランドスラムの男子シングルスのようなメジャーな大会は5セットマッチを採用しています。この場合、3セットを先取した方が勝利します。
マッチはどちらかの選手が既定のセット数を獲得すると終了します。
最終セットの試合方法については、大会ごとにルールが異なる場合があります。
- 6-6でのタイブレーク:2ポイント差をつけて7ポイント先取した方がタイブレークおよびそのセットを獲得し、マッチの勝者となります。
-タイブレーク無し:過去に全仏オープンを始めとするいくつかの大会では、最終セットでも2ゲーム差がつくまで続行されていました。そのため試合が長丁場になることもあり、最長では11時間を記録したことも。2010年のウィンブルドンでジョン・イズナーと二コラ・マウが繰り広げた死闘でした。
現在はマッチが極端に長引かないよう、大半の大会でタイブレークが導入されています。
アドバンテージセットでは、タイブレークに入らずに試合が続けられるため、両者の持久力とスキルが試されます。6-6のタイになると、どちらかが2ゲーム差をつけるまでそのセットが続きます。そのため、6-4や7-5といった通常のスコアよりも遥かに大量点が記録されることもあります。
普通のセットと同じく、ここでも2ゲーム差で6ゲームを先制した方が勝者となります。6-6になると、2ゲーム差がつくまでそのセットは続けられ、スコアは8-6、10-8、16-14などとなることもあります。
シングルスでもダブルスでも、ポイント、ゲーム、セットという基本の構造は変わりません。しかし以下のような違いもあります。
-ノーアドバンテージ方式:ダブルスでは、カジュアルなプレーやプロの試合を問わず多くの場合アドバンテージ方式は採用されず、デュースの際は次のポイントを取った方がゲームの勝者となります。
-最終ポイントのサーブ:ダブルスでデュースになった時、レシーブするチームがリターンする選手を決めます。
-最終セット:ダブルスでは多くの場合、両チームが1セットずつ獲得した際、第3セットの代わりにマッチタイブレークで勝敗を決めます。マッチタイブレークでは、2ポイント以上の差をつけ10ポイントを先取したチームがそのセットを取り、マッチの勝者となります。
シングルスでもダブルスでも、試合に影響する要素の一つがセット数です。試合形式には2種類があります。
-3セットマッチ:選手Aが連続2セットを先取(6-4や7-5など)するとマッチ終了となります。
-5セットマッチ:選手Bが3セットを先取(6-3、4-6、6-2、7-5など)した時点で勝利が決まります。
一般的には3セットマッチが採用されることが多く、通常5セットマッチはグランドスラムの男子シングルスでのみ行われます。どの様な状況のプレーでも、マッチ形式を把握することで、戦術や体力配分などの調整ができるようになります。
得点の数え方と同じく、テニスでは独特の専門用語が使われます。このスポーツをとことん楽しみコートでスムーズにプレーするためには、よく使われる基本用語を覚えることが大切です。
-ラブ:0ポイントのこと。たとえばスコアが「フィフティーン・ラブ」であれば、片方の選手が15ポイント、もう一人はまだ無得点という意味です(ちなみにこの「ラブ」とは、数字の「0」が卵の形に似ているため、フランス語で卵を意味する言葉に由来すると言われています)。
-デュース:ゲームのスコアが40-40でタイになった状態。ここから勝つには連続で2ポイント先取しなくてはなりません。1ポイント取ると「アドバンテージ」になり、続けて次のポイントを取るとゲーム獲得となります。
-ブレークポイント:リターン側が次のポイントを取ればゲームを奪い、サービスゲームを「ブレーク」できる場面を差します。たとえば30-40でサーバーが劣勢な状況が、ブレークポイントです。
-ウォークオーバー:片方の選手がケガや病気、その他の理由で試合を棄権した場合、相手選手は自動的に不戦勝となります。ただし、このマッチはプレーしたとはカウントされません。
-エース:サービスボックスにサーブが入り、相手がそれに触れることなく直接ポイントが入ること。
-ダブルフォルト:サーバーが1回目と2回目のサーブ両方を失敗したことを差します。この際、ポイントは相手に与えられます。
-レット:サーブがネットに触れたものの、正しいサービスボックスに入った場合、サーブはやり直しになります。
-アンフォーストエラー:相手の鋭いプレーが原因ではなく、自らの凡ミスでポイントを失うこと。
-アドバンテージ・サーバー:デュースの後にサーバーがポイントを取った状態を「アドバンテージ・イン」または「アドイン」(日本ではアドバンテージ・サーバー)と言います。
-アドバンテージ・レシーバー:デュースの後にレシーバーがポイントを取った場合は「アドバンテージ・アウト」または「アドアウト」(日本ではアドバンテージ・レシーバー)と言います。
試合中、頻繁に使われるこれらの用語は、自然とすぐに覚えてしまうはずです。
独特の言い回しやポイントの数え方を学んだら、今度はその知識を活かしてプレーを楽しみましょう。さっそく、お気に入りのテニススカートやタンクトップ、好みのテニスコアスタイルをまとってコートへと繰り出しませんか?この次に「フィフティーン・ラブ」というコールを聞いたら、自信を持ってその意味を説明できるはずです。